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1 はじめまして、お父さん
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しおりを挟む「あさって、バレンタインデーだけど、どうする?」
休み時間。真央ちゃんが、あたしと有香ちゃんに、ひたいを寄せてきた。
ここは、六年生の教室。
廊下寄りの真央ちゃんの席を、いつものように、あたしと有香ちゃんでかこんでる。
「綾は、もちろん中条にやるんだろ? 有香は? 今年はだれかにあげるわけ?」
「わたしは……」
有香ちゃんは、ふたつにむすんで胸の前でたらした黒い髪をさらっとなでた。黒縁メガネの奥の切れ長の目で、天井をあおぐ。
「今年は……パスかな。しいていえば、友チョコ、ふたりにあげるよ。真央は? 校長室アタックする?」
「するする。去年は校長先生出張でチョコわたせなかったからな。今年こそ、あふれる想いを伝えるんだっ!」
「うわぁ~っ!! 真央ちゃん、カッコイ~!!」
あたしは、目キラキラで、両こぶしをにぎりしめた。
真央ちゃんは、太っ腹の男言葉に、太っ腹のお腹。だけど、ふっくらほっぺたと、ふわふわ天然パーマのボブ頭は、とっても女の子だと思う。
「う~ん。わたしにはやっぱり、真央の趣味は理解できないけどね~。だって、校長先生って、来年で定年じゃん。孫、ハタチってうわさだよ?」
「なんであの、ダンディさがわかんないかな? しかも、離婚して今は独身なんだぞっ!チャンス、チャンスっ! それに、うちには、有香の趣味のがわかんないけどな。前、有香が『カワイイ』連発してたのって、一年だったっけ? 幼稚園児だったっけ? しかも、女子」
「ほっといてください。それより、チョコ、どうするの? 手づくり? 買うの?」
「あたし、手づくりしたいな~」
「待て、綾。綾はダメだっ! 綾が手づくりしたら、中条はカンペキ、腹壊して入院だぞ」
「ひど~い、真央ちゃん。どういう意味よ~?」
ぷうとほおをふくらませたら、「じゃあさ、わたしといっしょにつくらない?」って、有香ちゃんが身をのりだしてきた。
「真央も手づくりにして、三人でさ。あした、みんな、習い事ない日でしょ? うちに集合しよ」
「わ~いっ! 有香ちゃんのお菓子教室だ~っ!! 」
「おお、有香、ナイスアイディアっ!」
真央ちゃんも親指をぐっと立てる。
有香ちゃんは、勉強もお料理もお裁縫もなんでもできる。趣味は子ども服をつくること。女子力すご~く高いんだ。
それにくらべて、あたしときたら……。
「よかったな、綾。これで、中条も、腹薬用意しなくてよくなったな」
も~、真央ちゃんてば。ふ~んだ。
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