ナイショの妖精さん

くまの広珠

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6 ヨウちゃんの気持ち・あたしの気持ち

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 白い太陽の光が、灰色の雲の切れ間に差し込んできている。

 ヒースの茂みを流れていくのは、冷たい冬風。


「……そんなことがあったんだね……」


 鵤さんは、あたしたちの話をきき終わると、深いため息をついた。


「妖精たちを黒くしていたモヤは、黒いタマゴの中身そのものだった。それが寄せあつまって、綾ちゃんにとり憑いた。葉児君は、それをなんとか外に引っぱりだして。引っぱりだされたモヤは、綾ちゃんと戦って、また消えたと」


「これでもう、本当に、あのタマゴの中身は消えたんですよねっ!?  だって、あたし、エルダーの火で、散り散りにしちゃったし」


「……いや……」


 ヨウちゃんは、ヒースの中に片ひざを立てて座っている。あごに手をかけて、砲弾倉庫跡を流し見している。


「エルダーの炎は、本来、魔術をかけた相手をあぶりだすためだけのものだ。それで倒せるのかどうかは、さだかじゃない」


「じゃあ、あいつはどこに行ったのっ? まだ、どっかに身をひそめていて、そのうちまた、出てくるっていうのっ!? 」


「……わからない。……でも……」


 琥珀色の瞳が、空をあおいだ。

 つられて、あたしも鵤さんも、空を見あげる。


 雲の切れ間に、太陽の光が、天使のはしごになって、ななめにおりてきている。

 白いほおや肩にひざしを受けながら、妖精たちがダンスを踊っている。

 トンボの羽でくるくる回るたびに、銀色のりんぷんがキラキラとあたしたちの頭上にふりそそぐ。

 チチとヒメも、手を取りあって、ステップを踏んでいた。

 自分たちが真っ黒になっていたことなんて、もうすっかりわすれたみたい。「チチチチ」「キンキン」って声をあげて笑ってる。


「みんなが元気になって、よかったな……」


「……うん」


 ピンクのコートのすそを、ヒースの茂みに広げて座る、あたしの手足もちゃんと肌色。

 ピロロンと、あたしのポシェットでキッズケータイが鳴った。


「――あれ? 誠から?」


 携帯電話を取り出して、着信画面を見ていたら、横でヨウちゃんがわかりやすく眉をひそめた。


「なんの用だよ、日曜の昼間に。綾、けっこう誠から電話かかってくんの?」


「ううん。でも、誠って、金曜日もインフルエンザで学校休んだよね。どうしたんだろ?……もしもし、誠?」


 携帯を耳につけると、「和泉ぃ~?」って能天気な声がきこえてきた。


「誠? インフルエンザはだいじょうぶなのっ!? 」


「へへへ~。和泉が心配してくれたぁ~っ!!  へ~き、へ~き! もう熱はさがったよう。だけどさ~、オレ、まだ、あしたは学校に行けないんだよねぇ。それで、和泉にお願いがあるんだ。オレのかわりに、あしたの放課後、和泉んちのそばの児童館に行って、豆まきの手伝いしてきてほしいんだよ~」


「へ……? 豆まきっ!? 」


「節分の豆まき。ほら、前にオレ、行くって言ったじゃん。教室のオレのつくえの中に、鬼のお面がふたつ、入ってるからさ~。葉児とふたりで」


「……ヨウちゃんと?」


 顔をあげたら、横のヨウちゃんと目が合った。

 腕を組んで、なんか上から目線。


「事情はわかった。綾、ケータイ貸せ」


「ほぇ?」


「おまえの耳から、あいつの大声、ダダもれなんだよ」

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