ナイショの妖精さん

くまの広珠

文字の大きさ
上 下
269 / 646
3 広がりゆく闇

31

しおりを挟む

「……ひどい……」


 白いころのヒメやチチの姿を思い出していた。

 くるくるダンスして踊る妖精たち。キラキラ舞う銀色のりんぷん。はじけた笑顔。


「ヨウちゃん、ひどいっ!!  フェアリー・ドクターは、妖精を守るお医者さんなんじゃないのっ!? 」


「けどオレは、とうさんみたいに強い意志があって、フェアリー・ドクターをやってるわけじゃないから。妖精なんて……おまえを失うことに比べたら、ちっぽけなもんなんだよ……」


 ヨウちゃんは、奥歯をくいしばって、うつむいた。


 胸が痛い。

 ズキズキ痛い。


 だってヨウちゃん……わかってる。

 言っちゃいけないこと言ってるって、わかってる……。


「ごめん。……ほかの妖精たちを、見捨てるわけじゃない。まずは綾を治して。それから、先のことをあらためて考えたい。とにかく……綾が治ってくれなきゃ……オレには、なんも考えられない……」


「……で、でも……」


 右手のひらに、硬いビンの感触がした。

 ミストのポンプに入ったマロウの小ビンが、あたしの真っ黒い手のひらに乗せられている。


「考えといて」


 ヨウちゃんは立ちあがると、ドアを開けて、廊下へ出て行った。





しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

アイの間

min
児童書・童話
中学2年生の雪。 思春期の彼には、色々と考えることがあるみたいで…。

タイマヲマイタ 【園児・小学生時代】

テジリ
児童書・童話
 若草市立ヒヲス小学校に転入してきた、時期外れの転校生・結尾咲人に回覧板を届けに行った柾谷は、異性装の彼に対面する。その姿に感動を覚えた柾谷は、咲人に瓜二つな彼の妹、樹に執着するが……その他、様々な人物達と学生生活を描いた群像劇 〈簡易あとがき〉  特に柾谷 稲穂と結尾一家のキャラクターは、完全なるフィクションである。何故なら元々タイマヲマイタは、柾谷と結尾 咲人を話の中心に据えた短編の予定で、 当初考えていたオチとしては、勤続何十年の高校教師となった柾谷が、勤務先の高校で結尾 咲良という名の女子生徒を受け持つこととなり、ひょっとしたら小学生時代に突如転出入してった咲人の娘か何か? と思いつつ、教室で顔を合わせる場面で終わる、といった、雰囲気小説になる予定だったからだ。

秘密

阿波野治
児童書・童話
住友みのりは憂うつそうな顔をしている。心配した友人が事情を訊き出そうとすると、みのりはなぜか声を荒らげた。後ろの席からそれを見ていた香坂遥斗は、みのりが抱えている謎を知りたいと思い、彼女に近づこうとする。

処理中です...