ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 広がりゆく闇

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 ふとんからまた、目だけ出すと、ヨウちゃんが、あたしのベッドのふちに腰かけてる。


「綾……機嫌直ったか……? オレ、ちゃんと、おまえのお母さんに、あいさつできただろ?」


「……うん……」


 思わずつぶやいちゃったら、ヨウちゃんの口元がゆるんだ。


「なんだ。おまえ、やっぱ、しっかりきいてたんじゃねぇか。綾のお母さんて、いつ見ても、美人だよな。オレには、黒い妖精にとり憑かれてるようには、見えなかったぞ」


 あれは、ママのただの営業スマイルなんだけど。


 ふとんの中で目を動かして、ハート型の目覚まし時計を見たら、夜の七時だった。


 ヨウちゃん……こんな時間なのに……とんできてくれたんだ……。

 あたしが、あんなを電話かけちゃったから。


 やさしさが、チクチク胸に痛い。


「綾、放課後さ……。おまえが帰った後、クラスで、ちょっとした騒ぎがあったんだぞ」


「……騒ぎ?」


 ふとんから、そっと目を出したら、ヨウちゃんのほっぺたがふんわりほほえんでいた。


「窪がみんなに、青森とつきあってる宣言したんだよ。青森、うれし泣きしてた。窪がみんなに話す気になったのは、オレたちのおかげだって言われた」


 オレたち・・のおかげ……?


 あたしはまた、ぎゅっとふとんの中に頭を引っ込めた。


「あたしじゃなくって、ヨウちゃんだけ・・のおかげでしょっ!! あたし……悪いことしかしてない……」
「いや。青森は、綾がみんなの前で言い放ってくれたのが、結果的にはよかったんだって、言ってた。

窪はさ。照れくさいから、青森がカノジョだってことを、クラスのみんなから隠してただけなんだ。なのに、それが青森を傷つけてた。このままだと、ふたりのみぞは、どんどん深まっていって、お互いの気持ちがはなれていってしまったかもしれない。

だから、ふたりの仲がもどったのは、あのとき、綾がバラしたおかげでもあるんだよ」


 あたしの……おかげ……?


「ちがうっ! あたしなんか、アホっ子で! みんなにめいわくばっかりかけてっ!!  ダメで、ドジで、なんにもできなくてっ!!  あたしにはいいとこなんて、ひとつもないもん! この世に『あたしのおかげ』なんてこと、あるわけないよっ!! 」


 ふとんの中に、自分の胸の傷口からわきだした真っ黒いモヤがたまってる。モヤに両手も両足もしばられて、もう、ここからは抜け出せない。


「綾っ!?  どうしたんだよ? おまえ、本当におかしいぞっ!」


 パッと、ふとんをめくられた。


「や、ヤダっ! 見ないで~っ!! 」


 まぶしさに目がくらんで、あたし、両手で顔をおおって、丸くなる。



 ガサ……。


 すぐ横で音がした。

 そっと、両目から指先をどけると、ヨウちゃんがカーペットにひざまずいていた。

 両腕をぶらんとたらして。肩から力が抜けている。



「……綾。おまえ……どうして……?」

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