ナイショの妖精さん

くまの広珠

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4 永遠の子どもの国からの脱出

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「あ~、ムッカ~っ !!」


 ほっぺをふくらまして、誠がじだんだ踏んだ。


「なんだよぉっ! 和泉のバカぁ~っ!!  オレのこと、知ったかぶりしちゃってさ~っ! い~よ、もうっ! コレはいらないんだね~っ !!」


 誠のジャケットのポケットから出てきたのは、見覚えのある小鈴。


「あっ! あたしの鈴っ!」


 のばしたあたしの手から遠ざけて、誠は小鈴をバルコニーの柵の外にさしだした。


「和泉ぃ。オレ、ホントはこの鈴、和泉がだれのために絵づけしたか、知ってる。葉児へのクリスマスプレゼントだったんだろ? でも、あげさせない。オレが今、ここから捨ててやるっ!」


「ま、誠っ! やめて。それじゃ、誠がすごく悪い人みたいだよっ!」


「い~よ。どうせピーターパンにはもどれないなら、フック船長になってやるっ!! 」


「や、やめてっ!! 」


 あたしは、パッと前にとびだした。

 バルコニーの外に両手をのばして、体を柵からのりだして、鈴をキャッチ。



 ホッとした瞬間、体がさらに前のめりになった。


 ……え?


 バルコニーの外側に、頭が、どんどんかたむいていく。

 何十メートルも下。街灯の明かりに照らされる、園内のアスファルト。


 ええええっ!?


 お、お、お、お、落ちる~っ!!



「綾っ!! 」


 後ろから、お腹に腕をまわされた。

 ぐいっと、体を後ろに引かれて、バルコニーの内側にもどされる。


 ド、ド、ド、ド。


 打ちつける心臓の音。

 あたしはぺたんと、バルコニーに尻もちをついた。



「か、間一髪……」


 あたしのお腹に手をまわして、後ろで、ヨウちゃんもへたり込んでる。


「よ、よ、ヨウちゃん。た、助けてくれて、あ、あ、ありがとう……」


「アホか、おまえはっ!!  気をつけろっ!」



「い、い、和泉……ご、ごめん……」


 顔をあげると、誠があたしたちの前で、ガタガタと震えていた。


 あ……こんな構図、劇でもあった。

 あのときは、あたしとヨウちゃんが逆だったけど。


「お、お、お、オレ、こ、こ、こんなつもりじゃなくて……。い、い、い、和泉までお、お、落ちかけるなんて……思ってもなくて……。だ……だって……和泉って、オレといても、いっつも葉児のことばっか、考えてるじゃんか……。だから……くやしくて……。ちょっとぐらい、嫌がらせしてやりたくなったんだよ……」


 ……誠。


 鼻の頭を赤く染めて、小さな子みたいに鼻をすすってる。



「ちがうよ、誠。この鈴は、誠にあげるつもりだったんだよ」


 あたしはひざを立てて、ヨウちゃんの腕の中から、立ちあがった。
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