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4 永遠の子どもの国からの脱出
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しおりを挟む「……綾っ!」
イルミネーションで彩られた入り口の大広場を、背の高い影が走ってくる。
風になびくさらっさらの琥珀色の髪。
「ヨウちゃん、来てくれてありがとうっ!」
あたしは、巨大クリスマスツリーの前で、ヨウちゃんのそばにかけ寄った。
電話してから、二十八分。
ヨウちゃんは、ひざに両手をついて、ハアハア息を整えてる。
家から地元の駅に出て。そこから、遊園地の直通バスに乗って。バス停からここまで走ってきてくれたんだ。
かがんでいた上半身を起こした長身に、あたしの心臓、ズキューンってうち抜かれた。
だれ、この人……?
いつもはヨウちゃん、ジーンズに黒かグレーか白のトレーナーを着てるだけなんだよ? その上は、たいてい、黒のウインドブレーカー。
なのにさ。今は、ライダーみたいな黒いスキニーパンツをはいてる。はおってるのも、タイトな腰丈のグレーのジャケット。中にはダークグレーのVネックのカットソー。
もともと、細身で足が長いから、それがきわだっちゃって。
「ヨウちゃんて……そんな服も持ってたんだ……」
ぽっぽって、ほてるほっぺを隠すためにうつむいたら、「……おまえな」ってため息。
「……悪いかよ? てか、そっちこそ、なんだよそのカッコ。誠のためか?」
「……え?」
自分のポンチョを見おろしてみる。
顔をあげたら、ヨウちゃんは、口元を腕で隠して、眉をひそめてた。
「言っとくけど、オレはいつも、スニーカーにトレーナーにショートパンツの綾ぐらいしか見てねぇんだぞっ!」
あれ? ヨウちゃんのほっぺた、赤い。
もしかして……「カワイイ」とか思ってくれてる……?
「な、なによっ! だれのためとかじゃなくって、遊園地に来るんだから、あたしだって、少しくらいがんばって、オシャレするもんっ! じゃあ、ヨウちゃんは、あたしに見せるために、きょうは、そんなカッコしてきたのっ!? 」
「……そうだよ」
えっ!?
ヨウちゃん、ぷいっと背中を向けた。
「う、ウソっ !? い、今……」
「行くぞ! 誠をさがすんだろっ!」
強引に言葉をかぶせて、ヨウちゃんはさっさと歩き出す。
うわ~……っ!!
会って数分で、すでに、心臓がはちきれそう。
熱いほっぺたを冷たい指先で覚ましてたら、あたしのポシェットでケータイが鳴った。
あわてて取り出したら、公衆電話から。
「ま、誠だっ! まだ一時間たってないのにっ!! 」
あたしの声に、ヨウちゃんがふり返る。
「綾、通話の声、スピーカーから流せ」
「う、うん」
慣れないボタン操作でわたわたしながら、なんとかスピーカーホンに切りかえたら。
ワッと誠の声が、ケータイから外にもれだした。
「お~い、和泉ぃ? なんで、葉児なんか呼んじゃってんの~? ズルくない~? きょうは、オレとふたりで遊ぶ約束だったのに~」
あ……声、トゲトゲ。
サボテンになったみたいに、誠のトゲが体中にささって、ズキズキ痛い。
「ま、誠、ごめんね。でも、あの……」
「ねぇ、観覧車のチケットっていくら?」
誠の声の後ろに、知らない女の人の声が入って、ハッとした。
「パスポートがあれば、追加料金なしで乗れますよ。観覧車代だけだと、八百円です」
おとなの男の人の声が、静かに受け答えしてる。
もしかして、誠のいる場所って……。
顔をあげたら、ヨウちゃんと目が合った。
「観覧車っ!」
通話がぷつんと切れる。
「ヨウちゃんっ! 観覧車の横に、公衆電話があるっ!」
「そこだっ!! 」
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