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4 永遠の子どもの国からの脱出
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しおりを挟むあたしは、ポシェットからキッズケータイを取り出した。登録してきた、ヨウちゃんちの電話番号。ピッとボタンを押して、電話をかける。
プルルルル……プルルルル……。
耳の奥に鳴りひびく呼び出し音。
三回目で、「……はい。中条です」って、低い声が出た。
うわっ! 本人っ!
いつもはたいてい、「は~い、中条でございます」って、お母さんの明るい声がするんだけど。
「……あの……ヨウちゃん? あたし、綾……」
ドキン、ドキン、心臓が鳴る。
本当、電話って慣れない。だって、今、電話の向こうでヨウちゃんがどんな顔してるのか、わかんない。
「あのね……今ね、まだ……ベイランドなの……。きょうはもう、会えないと思う……。たぶん、このまま夜になっちゃう……」
「……誠と、いるのか……?」
ヨウちゃんの声、かすれてる。
「……ううん。誠が、見つからないの……」
あたしの目から涙がこぼれて、ケータイをぬらした。
「誠は……つらいときに、あたしのそばにいてくれた。あたしを……元気にしてくれた。だからあたし、誠に『ありがとう』って伝えたい……。誠が、『もう行ってもいい』って言ってくれなきゃ、あたし、ヨウちゃんのところに行けないよ~……」
「ちょっと待て。綾、今、どういう状況なんだよ?」
「あ……あのね……」
ズッと鼻をすすって、あたしは、ヨウちゃんに今朝からのことを話した。
誠が「海賊ごっこ」をはじめたこと。ベイランドのどこかに隠れていること。どんなにがんばっても、見つからないこと。
「……わかった。オレもそこに行く」
「で、でも……ヨウちゃんまで巻き込んじゃ……」
「オレのことでもあるだろ? 綾が、誠に『行け』って言われなきゃ、誠からはなれられないんだったら、オレだってこまるんだよ」
ドクっと心臓が打ちつける。
「だから、オレが誠を説得してやる。三十分待ってろ」
ヨウちゃんが切った電話を、あたし、両手でぎゅっとにぎりしめた。
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