ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 伝えたいこと

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「よかったね。有香ちゃん」


「うん。よかった。無謀かと思ったけど、あきらめないで、中条の店に、服置いてもらっててよかった……」


「やっぱり、才能があるとちがうね。あたしなんてなんにも才能がないから、ちょっとうらやましいかも……」


 思わずつぶやいちゃったら、女子たち、し~ん。


 うわ……はずかし~。同情モード。


 みんな、あたしがどんなにアホっ子か、よくわかってるんだもん。


「……綾ちゃん。たぶん、それちがうよ」


 有香ちゃんが、ぽつんとつぶやいた。


「……え?」


「『才能がある』って、最初からわかってて、はじめる人なんていないと思う。夢っていうのはさ、好きなことを、やめたくても、やめられなくて。ヘタでも、自分に向いてなくても、どうしても楽しくて、続けていってしまうことだと思う。

それを人に受け入れてもらえることなんて、ほとんどないんだけどね。だけどたまに、こうやって受け入れてもらえたとき、すごくうれしくて、幸せで。だから、もっと、続けていっちゃうんだよ」


「……受け入れてもらえたとき……?」


 きのうのヨウちゃんの声が、頭によみがえってきた。


――……綾……オレのこと、受け入れてくれる……?――


 ぼぼぼぼって、ほっぺたが燃えあがった。


「……え? 綾ちゃん……?」


「な、なんでもないっ! なんでもないのっ!! 」


 有香ちゃん、きょとん。

 女子たちもきょとん。


 あ、あれ……?

「夢」と「恋」って、なんか似てる……?


 だって、あたしもおんなじだった。

 ヨウちゃんに受け入れてもらいたくて、受け入れてもらいたくて。でもヨウちゃんにフラれちゃったから、自分に自信がなくって。

 それでも、どうしても、やっぱり、ヨウちゃんのことが好きで。


 ヨウちゃんを好きでいることを、続けていったんだ……。





「それで、クリスマスはみんなどうするの~?」


 体育館で、二学期の終業式があって。

 教室にもどったら、リンちゃんたちの声がきこえてきた。


「紀伊美はベイランドで遊園地デートでしょ?」

「ううん。ベイランドはナシになった」

「え~っ!?  カレシとなにかあったの~っ!? 」

「ディズニーランドに誘われたから」

「って、東京行くの~っ!?  そっちのほうがおいしいじゃん~っ!」


 そっかぁ……。

 冬休みに入ったら、すぐに、クリスマスなんだな……。


 リンちゃんたちのもりあがりにくらべて、真央ちゃんの席にあつまった、あたしたち三人組は、あいかわらず、まったり。


「……なぁ、中条ってさ。女子たちといっしょにいるの、やめたんだな」


 真央ちゃんが言ったから、「あ、そういえば……」って、あたしは後ろのロッカーを見た。

 ヨウちゃんは、大岩たちと、ロッカーの前で立ち話している。

 ちょっと前まで、リンちゃんたちがヨウちゃんの席にあつまって、ヨウちゃんは女子たちにかこまれてるっていうのが、ふつうだったんだけど。


 いつからだろう……?


「あいつもさすがに、誠に押されまくって、性根を入れかえたんかな? きのうのデコチューのあとも、かなりへこんでたし。きょうも引きずってるかと思いきや、いつもどおりにもどってるから、それはそれで、おどろいたけど」


「……うん~」


 ぼんやりきき流してたら、「綾」って、真央ちゃんたらデコピン。


「い、痛ぁ~。ひど~い、真央ちゃん~」


「だって、綾。うちの言ってる意味、わかってる? 綾って、ホンット天然だけど、アホっ子も大概にしないと、知らない間に、中条もどっかに行っちゃうぞっ!」


「ええっ!?  そんなのヤダっ! あたし、わかってるもんっ! きのう、ちゃんと本人からきいたもんっ!! 」



「……え?」


 真央ちゃん、目を丸くしてかたまった。

 有香ちゃんも、「手づくりの子ども服」って本を、ガタンてつくえの上に落として、目が点。
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