ナイショの妖精さん

くまの広珠

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 どうしよう。有香ちゃんとしゃべりたくない……。

 小一のころから、ずっと、親友だったのに……。




 あれから、一週間。

 有香ちゃんは、あからさまにヨウちゃんに話しかける。

 きょうも登校したとたんに、有香ちゃんはヨウちゃんの席まで歩いていった。それから、十分も二十分も、ヨウちゃんとぼそぼそ話してる。

 あたしとヨウちゃんが話すときは、ツノをはやしてるリンちゃんたちも、有香ちゃんに対しては、なんにも言わない。


 そりゃあね。

 クラス一、秀才で美人の有香ちゃんだもんね。リンちゃんでも、手が出せないんだ。



「あ~、和泉、かっわいそ~。フラれてやんのっ!」


 男子のはやし声がきこえてきて、あたしの胸、ズキンってなった。


「バカ、やめろよ」


 って、別の男子がとめてくれる。


「ちがうって。だって、和泉って、永井のことが好きなんだろ? 永井、最近、葉児とばっか、しゃべってんじゃん」


 ず~ん。


 墓石でも背負わされた気分。

 あたしが好きなのは、有香ちゃんじゃなくて、ヨウちゃんなんだけど。


 だけど、男子たちからでも、ヨウちゃんと有香ちゃんは仲良く見えるんだ……。


 あたし、あれからヨウちゃんちに行ってもない。

 また、有香ちゃんとはちあわせしそうで、怖くって。


 だってあたし、完全にオジャマ虫。


 ヨウちゃんと話し終わった有香ちゃんが、あたしと真央ちゃんのところに歩いてきた。


「真央、綾ちゃん。きのうの、漢字ドリルの宿題さ……」


 ヨウちゃんところに行く前は、眉をひそめてむずかしい顔をしてたのに、今は、すっきり口元が笑ってる。

 有香ちゃんがこっちにつく前に、あたしは、真央ちゃんのとなりからはなれた。


「……あれ? 綾?」


 まばたきする真央ちゃんに、あたしは「ん~、ちょっと用」って、生返事。

 あてもなく教室を歩いていたら、黒板の前にしゃがみこんでいる誠を見つけた。サッカーボールをイスみたいにお尻にしいて、山田と「あははは」って笑ってる。


「誠~、おはよ~。例のマグカップ、きのう、うちにとどいたよ~。誠のところはとどいた~?」


 あたしを見あげて、誠、にっこにこ。


「和泉ぃ、おはよ~。オレんちもとどいたぜ~。すっげぇ、ちゃ~んと、牛乳飲めんの~」

「え~? あたしのなんか、ママが一輪挿しにしようとしたら、下から、水、もれるんだもん。ぜんっぜんつかいものになんないよ~」

「あははは! 和泉のキリン。水もれキリン~っ!! 」


 昨晩、とどいたダンボールを開けてみて、もうひとつがっかりしたことがあった。


 色つけした鈴、入ってない……。



「……和泉ぃ。どうした~?」


 ハッとしたら、誠のクリクリ目が、あたしをのぞきこんでいた。


「う、ううん。なんにもないよ」


 今は、有香ちゃんといるより、誠といるほうが、楽。


 誠が、友だちでいてくれてよかった……。



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