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1 好きな人の、好きな人
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しおりを挟む誠といっしょに、会場を出ようとして、あたし、立ちどまった。
出口につくえが置いてあって、いくつかの粘土がならんでる。どれも手のひらサイズの、小さな置物。サンタさんの形。トナカイの形。ジンジャーマンクッキーの形。鈴の形。
あとは色をつけて、窯に入れるだけ。
「色つけ、三百円。クリスマスプレゼントや、オーナメントにいかが?」ってポップつき。
あ……。
これ、いいかも……。いつも、助けてもらってるお礼に。
「ま、誠、待って。あたし、コレに、色つけしたいっ!」
あたしの呼びかけに、誠がふり返る。
あたしを見て。「クリスマスプレゼントや……」っていうポップを見て。それから、足元のスニーカーに視線を落とした。
「……誠?」
と、思うと、クリクリ目があがって、にっぱ~。
「りょうか~い。ゆっくり、色つけしちゃって~。オレは、廊下の向こうにさ、絵画展の絵がはってあったから、見に行って来るよ~。あとで、落ち合お~」
手をひらひらふって、誠が会場から出ていく。
あれ? 「オレも、やるやる~」って、はしゃぐと思ったのに。
とつぜんひとりになっちゃって、左肩がすーすー。
絵つけコーナーに行って。あたしは鈴に色を塗った。
お花のもようにしたつもりが、絵の具がたれて、血のりみたいになっちゃって。
絵の才能もゼロだってことは、よく理解した。
「……けっきょく、隠れた才能なんてなかったな……」
ナゾのキリンマグカップの横に、鈴を置いて。あたしは会場をあとにした。
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