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1 好きな人の、好きな人
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しおりを挟むのぞき込んだら、ノートの半ページにふたりずつ、ちがう服を着た女の子の絵が描かれてる。
「これね、ウエンディの服の案。六時間目に、衣装係でみんなの劇の服を決める予定なの。それで先に、綾ちゃんの意見もきいておこうと思って。綾ちゃん的には、どの服着たい?」
「え、えっと……」
一番右端が、白いレースのワンピースを着た女の子の絵。次は、ミニのワンピース。左ページには、ちょうちんそでの白雪姫みたいなドレスの絵。最後の絵は、雪の女王みたいな、スカートをゆかに引きずる白いロングドレス。
「ど、どれもステキ……」
「すごいな、有香。これ、ぜんぶ自分で考えたのか?」
横から、真央ちゃんものぞき込んでくる。
有香ちゃんは、劇の服をつくる、衣装係に決まったんだ。
自分たちでデザインして、手芸屋さんで布を買ってきて、家庭科室のミシンをつかって縫ってくれるんだって。
「わたし、最近、服をつくるのにハマっててね。今はまだ、本についてくる本型をいじくって、自分なりに改良するだけなんだけど。いつか、マイブランドを立ちあげられたら、最高だなって」
「あれ? 有香って、保育士になりたいんだったろ?」
「そうだったんだけど。でも、子ども服のデザイナーもいいな~って、ちょっとね~。だって、どんな子が着てくれるんだろって、想像するだけで、ワクワクしちゃう」
有香ちゃん、メガネの中で、目がキラキラ。
スゴイ……。
才能がある人って、宝石を身につけてる人より、よっぽどかがやいてる。
「き~てぇ! ニュース、ニュースぅ~っ!」
教室の前のドアから、すっとんきょな声があがった。
顔をあげたら、誠が、教室にバタバタ走り込んできてる。
「なんだよ、誠。うちらが、まったり話してんのに」
テンション高めの誠に、真央ちゃん引き気味。
だけど、誠はおかまいなし。
「和泉ぃ。オレさ~、給食当番で、給食室行って、お皿かたして来たんだけどさ~。昇降口の壁んとこに、めっちゃおもしろいポスターがはってあんの見つけたんだよ~ 」
大きな口に、教室中よく通る大きな地声。「うるさい」って、耳をふさぐ女子もいるけど、あたしは、誠のテンションって、キライじゃない。
「あはは」って笑いとばしてくれると、重かった気持ちも、羽がはえたみたいに軽くなるから。
「ポスター? って、どんな?」
「ふふん。オレサマ、ばっちり内容、暗記してきてやったぜっ! え~、オホン。『今週の土曜日、花田市コミュニティセンターで小学生陶芸教室を行います! 参加費はなんと無料! 本格的なてびねりのマグカップをつくってみませんか? あなたの隠れた才能が見つかるかも!』」
え……? 才能……?
「ああ、陶芸教室ね。そういうのって、しょっちゅう、市で開催してるよね。なにがそんなに特別なの?」
有香ちゃん、眉をひそめてうるさそう。
「だからぁ~。タダなんだって。ぜんぶ、タダなのっ! なぁ、和泉、オレといっしょに行かないっ?」
「行くっ!! 」
あ……。今のあたしの声、誠に負けずおとらず、教室中にひびいちゃった。
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