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1 好きな人の、好きな人
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しおりを挟む「なぁ。葉児は、どっちかっていうと、フック船長じゃねぇ?」
廊下側の真央ちゃんの席のとなりで、大岩が声をあげた。
大岩は名前のとおり、筋肉質な大きな体が、岩みたいにごっつごつ。
「だって、ピーターパンって、『永遠の子ども』なんだろ? 葉児じゃデカすぎて、すでに、おとなってカンジじゃん」
あ。それはたしかに。
そしたら、今度は男子たちが「そうだ」とか「じゃあ、おまえやれ」とか騒ぎ出した。
「ちょっと、みんな静かにして。――それで、中条君の意見は?」
有香ちゃんが、メガネの表面を光らせて、じろっとヨウちゃんを見る。
有香ちゃんって、ヨウちゃんが嫌いなんだよね。前に、あたしがヨウちゃんと仲良くなるのをとめたぐらい。
「まぁ、イメージ的に、ピーターパンは誠だな」
ヨウちゃん、さくっと、めんどうなことを横流し。
「はあ~っ!? 」
黒板の真ん前の席から、すっとんきょな声があがった。
見たら、おサルみたいに耳が横に広がった男子が、ちびっこい体でふり返ってた。
「お、オレぇ? オレがやるの~っ!? 」
大きな二重の目をクリクリさせて、誠、大きな口を横にがば~。
「おお。たしかに、誠のがピーターパンって感じするな!」
大岩がぽんっと手を打った。
「誠、やれよ。ピーターパン」
「ええ~っ!? オレなんかにでっきるかな~っ!? 」
って言いながらも、誠ってば、へらっへら。
誠って、本当にわかりやすい。今も、「もちあげられてうれしいです」って、顔に書いてある。
「ちょっと待ってよ、男子たちっ! 多数決で決めようよ!」
リンちゃんがわって入った。
「イヤもう、誠でいいだろ? 本人やる気あんだから。ちなみにオレはやる気ない」
ヨウちゃん、バッサリ。
男子たちがパチパチ拍手して。誠、「えへへ~」って頭をかいて。それで、あっさり決まっちゃった。
「次に、ウエンディ役やりたい人?」
有香ちゃんが黒板の前で、また声をあげたんだけど。
急に教室の中は、シーン。
さっきまで、「やりたい」って騒いでた女子たちが、全員うつむいて、つくえの上を見つめてる。
……あ。これじゃ、誠がかわいそう……。
女子たちってば、ピーターパンがヨウちゃんじゃなくなったからって、テンションが下がっちゃったんだ。
たしかに誠は、いつもおちゃらけてて、教室じゃ、おバカなチビっ子あつかいだけど。
いいとこもいっぱいあるんだよ?
「和泉ぃ~」
前の席から、誠ののんびりボイスがきこえてきて、あたし、ハッと顔をあげた。
誠が、イスの背もたれに左腕でもたれて、あたしをふり返ってる。
「和泉ぃ、ウエンディやって」
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