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5 決戦は卒業キャンプで
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しおりを挟む「タマゴは、産まれたときの妖精の感情だけじゃなくって、産んだあとに、置かれていた状況にも影響されるんでしょ? あのタマゴはきっと、外にいる兵士たちの恨みをいっぱい吸い込んで、ここまで黒くなったんだよっ!! 」
蛇は、兵士の霊たちの、黒い気持ち。
死ななければならなかったことに対する、恨み。
つまり、あの恨みのもとをたたなきゃ、タマゴの呪いは、何度でも復活してくるってこと。
「あ、あたしっ! あの人たちを説得してくるっ!」
起きあがって、走り出そうとしたら、「ば、バカっ!」って腕をつかまれた。
「相手は霊だろ? おまえ、どうやって、説得する気だよっ!? どうせ、なんも考えてないんだろっ? あぶないから、ひとりで行くなっ!! 」
「ひとりじゃないもんっ! 中に、ちゃんとヨウちゃんがいるもんっ!」
ハッと、ヨウちゃんの右手から力が抜ける。
黒いタマゴの表面が、ギラっと黒く光った。
蛇が出てくるっ!
あたしをつきはなして、ヨウちゃんが立ちあがった。
蛇に向かって、呪い返しのハーブ水をふりかざす。
「行ってこいっ!」
あたしは、倉庫の外へ走り出た。
ヒースの茂みに、兵士の霊たちが、ぽつん、ぽつんとつっ立ってる。
十人も二十人も、ぼんやりたたずむようすは、まるで、黒い墓標みたい。
その霊たちの頭から、黒い炎のようなモヤが吹きあがってる。
この人たち、ずっと前から、こんなふうに、ここにあつまってきてたのかな?
大昔に浅山で亡くなって。
体が埋葬されたあとも、心だけ、ふらふらと、浅山中を歩きまわって。
ヒースの茂みで、妖精の踊りの輪を見つけたとき。
どんな気持ちだったんだろう……。
「あのさ……ねぇ。かなしいんだよね……」
あたしは、ぎゅっと、自分の左手を右手でにぎりしめた。
影みたいな人たちに、人間のあたしの声がとどくかなんて、わかんない。
だけど、あたし、ほかに方法を知らない……。
「あなたたちが抱えてるのは、怒りとか、くやしさとか、そういう気持ちだけじゃないんでしょ?」
だって、本当にイライラしてたら、妖精たちの輪を壊しちゃいたくなると思う。
そうじゃなくて、ただ、ただ、妖精の輪に吸い寄せられてくるわけは。
きっと、真っ暗闇の中に、小さな希望の明かりを見たからだ……。
「あたしもね。一晩、ママやパパのところに帰れなかっただけで、すごくさみしかったよ。おうちが恋しくて、ママのつくったご飯を食べたくって、ママやパパの顔を見たくなった。あなたたちはもう何十年も、そんな気持ちのままで、ここにいたんだよね……」
どんなに妖精の輪に希望の明かりを見ていても、ながめるだけで手はとどかない。
それって、どれだけ、きついんだろう。
泣いてもさけんでも、二度と懐かしい人のところへ帰れない……。
「ねぇ、帰りなよ……。大切な人たちのところへ」
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