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5 決戦は卒業キャンプで
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しおりを挟む外でフクロウが鳴いている。
暗く電気を落としたキャンプ場のレクリエーションホールの中に、ひんやり夜の空気がしのび込んで来る。
六年生、二十三人。身を寄せあって座って。
大河原先生の口から出てくる話に、全神経をとがらせてる。
「……そうしてな。昔、戦争中に、ここの浅山で、たくさんの兵士たちが命を落とした。その中には、いろんな兵士がいた。先生たちのような、おとなの兵士。おまえらより、数歳、年上なだけの、若い兵士。
つらかったろうな……。どんなに家族のもとに帰りたかっただろう。おまえたちと同じように、家に帰って、親のつくった飯を食って、あたたかいふとんで寝たかっただろう。
だが……戦争は残酷だ。亡くなった若い兵士たちは、どんなに泣いてもさけんでも、二度と懐かしい人のもとへは帰れない……」
あたし、真央ちゃんと有香ちゃんの間で、ぎゅっとひざを抱いた。
授業中は、先生が黒板の前に立っていても、なにかとさわがしい、うちのクラス。
なのに、今は、外のフクロウの声がきこえるくらい、全員静まり返っている。
キャンプのレクリエーションのひとつで。これから、きもためし。
まずは、雰囲気づくりに、先生が怪談話をしてくれてるんだけど。それがなかなか物悲しいお話で。
「時代がかわって、浅山にキャンプ場ができた。頂上には芝生の広場ができて、植物園もでき、登山道が整備された。だが、戦争のなごりの砲台跡や、砲弾倉庫跡は、まだ浅山のあちこちに、うずもれている。そして、夜になると……。ザ、ザ、と足音が山道をおりてきて……山の中から、黒い男の影が……」
ガタっと、後ろから音がした。
みんなの心臓、ビックーっ!!
「な、なにっ!? 」
「なんの音っ?」
「へ、へ、兵士の霊っ!? 」
子どもたちの視線が、部屋の後ろにあつまっていく。
その先にいるのは、ヨウちゃん。
「……え? いや、ごめん。たんに足、組みかえただけ」
「は~っ!? なんだよ、葉児~」
大岩が息ついて、ハァ~。
「うわ~っ! オレ、オバケが中に入ってきたのかと思っちゃった~」
誠がおおげさに頭を抱えたから、みんなゲラゲラ。
「こらこら! 話を中断させんな。ここからが怖いとこなんだから! あとで、おまえらには、この霊が出たって場所を、じっさいに歩いてもらうからな~。よーくきいとけよ~」
大河原先生、自分のあごの下から懐中電灯をあてて、ニヤ~。
……ヨウちゃん、だいじょうぶかな?
あたしはもう一度、チラッと、後ろをふり返った。
右、リンちゃん。左、青森さんで。「中条君、こわいよ~」とかあまえられて、腕を組まれちゃってる。
でも……。一番、怖がってんの、ヨウちゃんだよ……。
あたしがあげたサシェは、妖精に関わること以外には効かないもん。
ポーカーフェイスでがんばってるのが、ぎゃくに痛々しい。
先生の話は、長々続いて。
開放されたのは、三十分後。
「じゃあ、これからきもだめしをはじめるぞ~」
手をメガホンみたいに口にあてて、大河原先生がさけんだ。
「男女ひとりずつペアになって。ひと組行ったら、十分後に、次の組が出発する。ルートは、もう覚えたな? 目的地の外人墓地の木の下で、恩田先生が待ってるから。恩田先生から証拠のスタンプをもらって、もどってくること。
ペアはくじ引きで決める。くじに書かれてる数字が出発の順番だ。男女別にくじの箱があるから、引きに来い~」
「え~、くじぃ?」
「わたし、中条君と組みたい~。だれか、中条君と当たった人いたら、交換して~」
「倉橋、ズルは禁止!」
いつものクラス並みにさわがしくなったホールの中で。あたしも真央ちゃんの後ろにならんで、女子の箱からくじを引いた。
四つにたたまれた紙を開けたら。
「あ、1」
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