ナイショの妖精さん

くまの広珠

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4 告白の後先

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「和泉ぃ。きょう、オレんち遊びに来ない~?」


 放課後。教室でランドセルを背負ってたら、誠がランドセルのふたをパタパタさせながら、やってきた。


「日曜、買い物につきあってくれたお礼にさ~、うちでホットケーキパーティーしようよ。生クリームのホイップと、フルーツ缶、今、冷蔵庫にあるからさ~」


 うわっ! それ、すっごい楽しそうっ!


「行くっ!」って言いかけて、あたし口をつぐんだ。


 ママに言われたっけ。

 告白してくれた人に、好きな人がいることを伝えなきゃダメだって。


「誠。ちょっと、きょう、寄り道して」

「は? う、うん。もちろん、おっけ~」


 ニコニコ笑いながら、誠があたしについてくる。

 教室の後ろのドアに向かって歩きながら、あたしは、一番後ろの席を流し見した。

 リンちゃんたちがまわりにいないと、ヨウちゃんの席って、ホント静か。顔をうつむけて、ヨウちゃん、ランドセルに教科書をつめこんでる。


 まずは、自分のことをちゃんとしなきゃ。


 あたしはぎゅっと、くちびるをかみしめた。




 学校を出て、住宅街を十分くらい歩いて。踏切をわたったら、左に海が広がる。

 白くって凍っていそうな水平線。青ざめている砂浜。

 ヤシの木がならんでいて、夏は海水客でにぎわう海水浴場も、今は犬の散歩しているおばさんくらいしかいない。


「うあ~っ! 海なんて、久しぶりに来た~っ!!  和泉ぃ~、砂の城つくろ~っ!」


 スニーカーとくつ下をぬいで、はだしになろうとした誠のスタジャンを、あたしは、あわててつかんだ。


「待って、誠。きょうは遊びに来たんじゃないの」


 だって、近場で人にきかれないとこって、海以外に思いつかなかったんだもん。


「え~? せっかくの海なのにもったいな~い。なにぃ~?」


 にこ~って笑った誠が、あたしの顔を見て、笑みを引っ込めた。


「……あのね。あたし、きのうの返事しなきゃ……」


「……あ~。オレとつきあおってこと? それ、い~よ。すぐに決めなくて。だって、オレ、和泉が葉児のこと好きだって、知ってるもん」


「……え?」


 ドキッと胸が鳴る。

 アホ毛をゆらして顔をあげたら、誠は「へへ」って鼻の頭をかいた。


「だからさ~。とりあえず、保留ってことで~。葉児を好きなままでいいからさ~」


「……いいの、誠? あたしがヨウちゃんのことを好きでも……?」


「うわ~っ! オレ、とうとう和泉の口から、ソレきいちゃった~っ!! 」


 誠、急に頭を抱えて、砂浜の上にしゃがみ込む。


「やっぱ、へこむ~。でも、どうっしょもないんだよなぁ~」


 誠って、素直。

 ホンット素直。

 あたしも見習わなきゃ。


「ありがとう、誠。あたしのことを好きになってくれて。あたしも誠といると楽しいよ。でも、あたし……誠の気持ちには応えられない……」


 ショートパンツをはいた足で。あたしも誠の横で、砂の中にひざをついた。


「ヨウちゃんはさ。怒ることもいっぱいあるし、エラそうなんだけど。意外とビビリで、怖がりなんだ。

それなのにさ。今、あたしからもみんなからも、なにかを隠して、ひとりで、よくわかんない、すっごい怖いことに、たえようとしちゃってる。そんなのちょっと、危なっかしいじゃん。見てらんないよ。

あたしはアホっ子だけど、なにか助けられることはないかって、これからさがしてみようと思ってる」


 潮風が吹いて、あたしの髪の毛を背中に流した。


 そう……。


 これが、あたしのやりたいこと……。


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