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4 告白の後先
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しおりを挟むリンちゃんが鼻をすすりながら、ほうきで教室をはいている。
青森さんは校庭掃除だから、外に行っちゃった。
あたしは、バケツでぞうきんをしぼりながら、リンちゃんが鼻のすする音をきいている。
告白って、こういうことなんだ……。
自分の気持ちを相手に伝えたって、相手が応えてくれるとはかぎらない。
もし、あたしの気持ちなんか、いらないって言われちゃったら。
あたしはこの気持ちを、どこにやったらいいんだろう……?
「なぁ、それで葉児はどこに行ったんだ?」
教室の後ろから、大岩の声がした。
見たら、後ろに貼られた掃除当番表のところに、男子たちがたむろしてる。
「あいつも、同じ教室掃除だろ?」
「だれか、見たヤツいる?」
「さぁ~? 昼休みから見てないけど」
ヨウちゃん……ホントにどうしちゃったの?
だって、ヨウちゃんって、掃除をサボるような人じゃない。
どんなにエラそうにふんぞり返っていたって、いつだって、あたりまえの顔をして、学校の決まりは守ってる。
あたしは、バケツにぞうきんをかけた。
男子やリンちゃんたちに気づかれないように、開いた教室のドアから、カニ歩きで廊下に出ていく。
出たら、パッとウサギみたいに、走りだした。
六年生の教室のある三階の廊下から、階段を一階分あがると、屋上のドアにつく。
キイと、アルミ枠のドアを開けると、外は肌寒かった。
きのうとかわらない冷たい雲が、空一面をおおってる。
だれもいない屋上を、キョロキョロと見まわして。
壁にそってまわったら、琥珀色の髪の男子が、壁に寄りかかって座っていた。
ふっと胸が軽くなる。
なんだ……こんなとこで寝てたんだ……。
「……ヨウちゃん?」
あたしが呼びかけても、ヨウちゃんは顔をあげない。
壁に背でもたれて首をたれ、足をのばして。腕を組んでる。
「ねぇ、ヨウちゃんてば。掃除の時間がはじまってるよ」
肩に手を置こうとして、あたしはその手を引っ込めた。
首を左にかたむけて、うつむいたヨウちゃんのこめかみから、汗がふきだしている。
つむってる目の下には、黒いクマ。ぎゅっと眉をしかめて、ハアハア、息が苦しそう。
足元を見て、後ずさった。
黒いモヤがある。
座っているヨウちゃんの足の下。
モヤの形は、ラグビーボールを横に倒したみたい。その中に黒い丸。
……あの目っ!!
お父さんを倒した目っ!!
「よ、ヨウちゃんっ!? ね、ねぇ。なにっ!? なんなの、これっ!? 」
あたしに肩をゆさぶられて、ヨウちゃんはうっすらと目を開けた。
「……え? 綾……?」
「こ、これって、アレでしょっ! 誠を襲ったモヤっ!! ねぇ、どうして、これがヨウちゃん、とこに……」
あたし、ヨウちゃんの両肩に両手を置いて、馬乗りになってた。
だって、怖いっ! 怖いっ!! 怖いよっ!!
「ヨウちゃん、どうして教えてくれなかったのっ? なにが起こってるのっ!? 」
「……綾。落ちつけ」
まだ前髪を汗でぬらした、ぼんやりした顔で、ヨウちゃんは、あたしの手首をつかんで、自分の肩から引きはがした。
「落ちつけるわけないでしょっ! だから、ヨウちゃん、最近、ずっとおかしかったんだっ!! もしかして、ヨウちゃんも、あの夢見たのっ !? お父さんが襲われる夢! ヒメのタマゴから黒いモヤがあがって、この目がお父さんを……。なんで? ヨウちゃんには関係ないのに……。まるで……まるでこんなの……呪いみたい」
両目から涙があふれて、ヨウちゃんの顔がよく見えない。
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