ナイショの妖精さん

くまの広珠

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4 告白の後先

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 ……ヨウちゃんに告白……?

 あたしが……?


 ムリムリ、ぜったいありえない~っ !!



 給食を食べ終わった昼休み。

 きょうはなんだか女子たちがせわしない。

 リンちゃんたちに背中を押されて、ヨウちゃんまで屋上につれて行かれちゃって。

 けっきょく、教室のまん中の列の、一番後ろの席はからっぽ。

 いつもどおりに、真央ちゃんの席を有香ちゃんとかこんで。あたしたちは、まったりおしゃべりタイム。


 ほら、ママ。わかる? やっぱりムリなんだよ!


 学校じゃ、リンちゃんたちのバリケードがかたいし。

 ヨウちゃんの家にも行けないんじゃ、あたしなんて、告白はおろか、ヨウちゃんと一言、口をきくのだって、むずかしいんだから。


「みんな、きいて~っ!!  屋上で青森さんが、中条君に告白したって~っ!」


 廊下を女子たちがドタドタと走ってきて、あたしの肩、ビックーってとびはねた。


 えっ? こ、こ、こくはくっ!?


 青森さんは、リンちゃんといつもいっしょにいる女の子。眉毛がきりっと太くて、それがよく見えるように、前髪をあげてピンでとめている。

 ヨウちゃんのことで、リンちゃんとキャアキャア言っているのは、知ってたけど。

 教室をキョロキョロしたら、教室にのこされた女子たちがはしゃいでた。


「え~っ!?  ウソ~、ホント~っ !?」

「ね~。それで、返事は~っ!? 」


「なんだか、スゴイさわぎだね」

 このクラスで、うるさそうに眉をひそめてる女子は、有香ちゃんと真央ちゃんくらいのもの。

 あたしたちグループをのぞいた六年の女子はみんな、ヨウちゃんのファンなんだもん。

 だけど、本気でヨウちゃんのことを好きなのは、リンちゃんのグループの子たちだけかもしれない。

 ほかの子たちは、アイドルみたいにヨウちゃんの話題で、もりあがりたいだけ。


「きいて、きいて~っ!」


 女子たちの第二陣がまた、廊下を走ってきた。


「今度はリンが、中条君に、二度目の告白したって~」


「うわぁ~っ!?  リンってば、ガッツある~っ!! 」

「それで、中条君、どっちを取るの~っ!? 」


「すっげ」って男子たちが引くくらい、女子たち勝手に大もりあがり。

 心臓が冷たくなって、ドクドク、ドクドク早打ちしてる。


「……なんで、急にこんなこと?」


 だけど、真央ちゃんはそっけない。


「ど~せ、アレだろ? 中条が最近、なにかとひとりになりたがるから。あいつらもあせってんだよ」

「もうすぐ、卒業キャンプだしね。その前に、カップルになっときたいってのも、あるんじゃない?」


 有香ちゃんも「やさしい布小物」の本から顔をあげない。


 ……なにその理由……。


「綾も、あれだぞ。気になるなら参戦してくればい~んだぞ。中条を取られたくないんだろ?」


 うっ! ドキっ!


 そうだった。あたしがヨウちゃんを好きなこと、ふたりにはバレてたんだ。


「……参戦なんて、しないよ……」


 あたし、ぎゅっと自分のショートパンツのすそをにぎりしめた。


「だって、そんな……気を引きたいからとか、卒業キャンプをカップルですごしたいからなんて理由で、告白するなんて。自分勝手すぎるよ……」


 きょうもヨウちゃん、調子悪そうだった。授業中までつくえの上につっぷしていたから、さすがに先生に怒られてた。

 怒られてもヨウちゃん、ダルそうで。

 目の下のクマも、だんだん濃くなってきてるみたい。


「体調悪い人の気持ち、ぜんぜん考えないで、一方的に自分の気持ちを押しつけるなんて、サイテーじゃんっ!! 」


「ふ~ん。まぁ、正論だけどな……」


 ぼんやりした真央ちゃんの声をききながら、あたしは自分の言葉が、ブーメランみたいに、はね返ってくるのを感じてた。


 やろうとしてたこと、あたしだっておんなじじゃんっ!

 ママにせっつかれたから、告白って。そんなんじゃ、リンちゃんや青森さんとかわんないっ!


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