ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 デートスポットには、オシャレして

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 生まれてはじめて、男子から告白された。

 ミニスカートから、部屋着のスウェットに着がえて。

 あたし、ダイニングのイスで、ぼぉ~。


「綾、あんたきょう、西湾のショッピングモールに行ってきたんでしょ? いいもの、買えた?」


 キッチンで夕飯のお皿を洗いながら、ママがたずねてきた。


「うん~。なんにも~……」


「あら、めずらしいじゃない。いつもは、ピンとか髪ゴムとか、なにかと買って来るのに」


「……うん~」


 両腕を前に投げだして、あごをテーブルに乗せていたら、お皿を洗うママの姿が、お手伝いをする誠の姿と重なった。


「……ママ。のこりのお皿、あたしが洗おっか?」


 うんしょとイスから立ちあがると、ママの目、キラキラキラ。


「え? あらホントっ!?  じゃあ、お願い」


 ママからスポンジを借りて、チュッと洗剤をつけて。あたし、お皿をごしごし。

 冷蔵庫に用があるとき以外で、キッチンに立つのって、久しぶりかも。


「ねぇ~。ママさ~。あたしぐらいのときから、モテたんでしょ~? 男子から告白されたとき、なんて返事してたの~?」


 お茶碗をこすりながら、たずねたら、ママが「えっ?」っと声をあげた。


 だってさ。

 誠ってば、「返事はすぐじゃなくていい」って言うんだもん。


 あたし、どうしたらいいんだろ……?


「ウソ、綾。もしかして告白されたのっ!? 」


 セットしてたコーヒーメーカーもそっちのけで、ママがあたしに身をのりだしてくる。


「う……うん……」


「やだぁっ!!  綾、スゴイじゃないっ! さすがは、ママの子っ! ね、顔はいいんだから。きょうみたいにがんばってオシャレすれば、ちゃんとモテるのよっ!!  で、だれ? クラスの子?」


 誠だってば。ママも幼稚園からよく知ってる、誠だよ。


 だけど、今、あたしが話したいのは、自分がだれに告白されたかってことじゃなくって……。


「あたしの話はいいの! あたしはママの話がききたいのっ! ねぇ、ママは告白されて、そのときカレシがいなかったら、その、告白してくれた人とつきあったの?」


「え……? ああ、そうねぇ~」


 ママは、あごにひとさし指を置いて、天井をあおいだ。


「だれでもってことは、なかったわよ。その、告白してくれた人のことを、自分でも『この人いいな』って思えなきゃね」


 この人いいな……って。


 お皿についてく泡を見ていたら、誠じゃなくって、ヨウちゃんの顔が浮かんできた。


 あ~あ。あたしは、だから……。


「『いいな』とは思うんだよ。告白してくれた人のこと、『いい人だな』ってのは、わかってるんだ。『いっしょにいたら、楽しいんだろうな』とも思う。……だけどさ。べつにもっと……『いいな』って人がいたら……」


「……綾。だれか好きな人がいるの?」


 あたしの肩、ビクッととびはねる。


「え……えっと……」


 ヤダ。なんか、顔熱い。


 ママは腰に手をあてて、じっとあたしの顔をのぞきこんでくる。


「そうね。そういう場合は、まず、自分の気持ちを整理しなきゃダメね。好きな人がいることを、告白してくれた人に伝えて。それから、想いの人に、自分の気持ちを、伝えるべきじゃない?」





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