ナイショの妖精さん

くまの広珠

文字の大きさ
上 下
112 / 646
3 デートスポットには、オシャレして

23

しおりを挟む




 二時間目の学活の時間。

 担任の大河原おおがわら先生が、「卒業キャンプ」の班を決めるって言い出した。

 小学校生活の記念として、修学旅行とは別に、一泊キャンプをするっていうのが、うちの学校の伝統行事。

 だけど、行くところは毎年「浅山」なもんだから、子どもたちから、非難ゴーゴー。

 そんなさ。九月の校外学習でもつかわれたような、学校から歩いて三十分でつくような場所でさ。今さら、キャンプしてもね。

 寝泊りするのは、山すそにあるバンガロー。

 飯ごう炊飯でカレーをつくって、たき火をかこんで、キャンプファイヤーをして、きもだめしまでして。

 内容的には、もりだくさん。


「小学校の思い出行事だから、飯ごう炊飯の班は、おまえらの好きに決めていいぞ~」


 大河原先生がさけんだから、クラス中、ワッともりあがった。


「ただし~、ひと班、四人から五人で組むこと~」


 みんな自分の席から立ちあがって、後ろの子と手を取り合ったり、「いっしょに組もうぜ~」ってさけんだり。


「真央ちゃん、有香ちゃんいっしょにやろ~」


 真央ちゃんの席にとんでいったら、すでに有香ちゃんも来ていて、にっこりした。


「もちろん、綾ちゃん! あと、ひとりか、ふたりだね~」


 って、ここまではよかったんだけど。

 あたしたち、「う~ん」ってこまっちゃった。


 六年の女子は十二人。

 で、あたしたち三人グループのほかに、リンちゃんたちのグループが四人いて。その子たちは、ヨウちゃんをふくめて、いっしょの班になろうとしている。

 あと、のこり五人の女子たちは、五人でひとつの班になることを決めたみたい。


「マズイな、うちらあぶれてる……」


 真央ちゃんが太い腕を組んで、うなった。


「あ、お~い。和泉ぃ~」


 教室の前のほうから、能天気な声がした。

 見たら、誠が、おサルみたいに大きく手をあげて、ふっている。


「和泉の班に、オレらも入れてぇ~」


 誠のとなりにいるのは、山田。お腹がポコンとふくれてて、ジャガイモみたいに真ん丸な顔。誠とよくしゃべっているのを見るけど、女子に対しては無口かな。


「な~んか。男子は、葉児をのぞいて、四人と四人で別れるんだってぇ~。そしたらオレたち、あまるじゃん」


 誠がペタペタ歩いてくる。

 クリクリ目を見ていたら、きのうのことを思いだした。


 誠ってば。あたしのこと「天使」とか言ってたような……。


 ボッと、ほっぺが熱くなって下を向いたら、横で、真央ちゃんが小さな目をパチパチ。


「あれ? 綾って、誠と仲良かったっけ?」

「えっ!?  まぁ、いいじゃん! これで、五人の班になるなら」


 ホントは、ヨウちゃんと組みたかったなんて……言えないもんね。

 チラッとヨウちゃんの席を見たら、ヨウちゃんのつくえの向かいで、リンちゃんがメンバー表を書き込んでいた。

 だけど、当の本人は、両腕の中に顔をふせて、つくえの上につっぷしちゃって。

 本気で具合悪そうなんだけど。ほっといていいの、アレ……。


「なあなあ。オレさ~、どう考えてもわかんないんだけど。きのう見たのは、なんだったのかなぁ? なんかさぁ。和泉、浅山にいたとき、背中に羽なかった?」


 うわっ!?  ドキっ!


「羽? なんの話?」


 有香ちゃんまで、黒縁メガネを光らせて、首をつっこんでくる。


「羽なんかあるわけないじゃん。誠ってば、なに言っちゃってんのよっ!! 」


 おたおたしてるあたしに、「そりゃそうだろ~な~」って真央ちゃん真顔。


「おかしいな~。幻だったのかなぁ~?」


 誠はまだ、首をこきこきかしげてる。


「幻に決まってるでしょっ!!  そんなことより誠、お母さんのプレゼントはもう決めたのっ?」


 とにかく、話題をそらさなきゃっ!


「……え~? まだぜんぜん~。って、あれ? オレ、和泉にそんな話したっけ?」


 ヤバっ!

 誠からお母さんのプレゼントの話をきいたのって、妖精のときだった。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』  ――それは、ちょっと変わった不思議なお店。  おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。  ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。  お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。  そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。  彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎  いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

がきあみ ―閻魔大王がわたしたちに運命のいたずらをした―

くまの広珠
児童書・童話
「香蘭ちゃん、好きだよ。ぼくが救ってあげられたらいいのに……」 クラスメイトの宝君は、告白してくれた直後に、わたしの前から姿を消した。 「有若宝なんてヤツ、知らねぇし」 誰も宝君を、覚えていない。 そして、土車に乗ったミイラがあらわれた……。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 『小栗判官』をご存知ですか? 説経節としても有名な、紀州、熊野古道にまつわる伝説です。 『小栗判官』には色々な筋の話が伝わっていますが、そのひとつをオマージュしてファンタジーをつくりました。 主人公は小学六年生――。 *エブリスタにも投稿しています。 *小学生にも理解できる表現を目指しています。 *話の性質上、実在する地名や史跡が出てきますが、すべてフィクションです。実在の人物、団体、場所とは一切関係ありません。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

YouTuber犬『みたらし』の日常

雪月風花
児童書・童話
オレの名前は『みたらし』。 二歳の柴犬だ。 飼い主のパパさんは、YouTubeで一発当てることを夢見て、先月仕事を辞めた。 まぁいい。 オレには関係ない。 エサさえ貰えればそれでいい。 これは、そんなオレの話だ。 本作は、他小説投稿サイト『小説家になろう』『カクヨム』さんでも投稿している、いわゆる多重投稿作品となっております。 無断転載作品ではありませんので、ご注意ください。

処理中です...