ナイショの妖精さん

くまの広珠

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5 真夜中のダンスパーティー

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 後ろから、背の高い少女もやってきた。

 中学生くらいかな? 白くて長いレースのドレスに身を包んで。おとなびた顔立ち。

 女の子がふり返って、あたしの手のひらをその少女にさしだす。

 ……キレイ……。

 腰までのびる、ふわふわパーマの長い髪。白い小花のかんむり。左右にわけた前髪の下には、透きとおるような白い顔。

 やけどしてた、あのおねえさん。

「よかった、元気そうですね」

 あたしが少女の手を取ると、少女はふんわりほほえんだ。

 少女はあたしの右手をにぎって、右手を高く上に。手首をくるっとまわしたら、あたしの体は、コマみたいに一回転。

「え、ええっ!? 」

 くるり、くるりと数回転。

「な、なにっ!?  これっ! バレエ?」

 少女はにっこり笑って、あたしの手からいったん体を遠ざける。と思ったら、片足でつま先立ちして、今度は、あたしといっしょに数回転。

 二輪のアサガオみたいに広がる、少女のドレスと、あたしのワンピース。

 これ、ダンスだ……。

 まわりを見たら、ハーブの上で、妖精たちがペアになって、くるりくるりと回ってる。

 このリズム……知ってるっ!

 あたしがてきとうに吹いていた、笛のリズム。

 早くなって遅くなって。と思ったら、急スピード。

「あはははっ! は、早い~っ!! 」

 あたしの手を取って、少女もキラキラ笑う。

 くるりくるり。くるりくるり。

 踊る妖精たちの輪ができる。

 くるりくるり。くるりくるり。

 輪は、ハーブの上に小さなつむじ風を巻き起こす。


 バタン!

 玄関のドアが開いた。

 中からヨウちゃんが、小ビンをにぎりしめて出てくる。

 サンダルをつっかけた足がとまった。

 琥珀色の目が、妖精たちの輪にくぎづけになる。

「……ヨウちゃん……」

 琥珀色の目と、目が合ったとたん、あたしの体はとまっちゃった。

 チョウの羽をパタパタと動かしているだけで、妖精たちといっしょに踊れない。

 だって、玄関のポーチに立ちすくむ、ヨウちゃんの目。真っ赤に染まって、うるんでる。

「……綾……行くのか……?」

 ヨウちゃんののどぼとけが、ごくっとさがった。

「本当に……そっちの世界に行くのか……?」


「……あたし……」

 ぶわっと、つむじ風が起こった。

 庭のハーブたちが、パタパタと葉をゆらす。

「わっ!?  ちょ、ちょっと待ってっ!」

 あたしの右手は、少女の妖精にぎゅっとつかまれてる。くるくる、くるくる。回転速い。ベイランドのコーヒーカップに乗っちゃったみたい。

 風の中で少女に目をこらしたら、キレイな青い目がつんととがって、ほっぺたぷっくり。

 あれ? もしかしてこの子、ヤキモチ妬いちゃってる?

「ね、ねぇ。お願い。ちょっとだけ、踊るのやめて。あたし、ヨウちゃんと話がしたいの」

 だけど、スピードはどんどんあがっていく。

 ほかの妖精たちもスピードをあげてきた。

 ピュン! ピュン!

 ハーブの葉の先が、通りすぎる妖精の羽でスパッ、スパッと切れていく。

 う、ウソっ!?  風がカミソリみたいっ!

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