ナイショの妖精さん

くまの広珠

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5 真夜中のダンスパーティー

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 まるで、ピーターパンのネバーランド。

 人間の世界のすき間に、だれも知らない不思議な国があって、そこに行けば、つらいことはぜんぶなくなって、いつでも笑って暮らせる。

 ずっとずっと、小さいころから見てた夢なんだから……。

「妖精さ~ん。いませんか~?」

 あたしは呼びかけながら、夜空を飛ぶ。

「あたしも妖精になりました~。仲間に入れてくださ~い!」

 浅山の木の枝で、フクロウが鳴いている。

 いつの間にか、舗装された道の上を飛んでいた。車のヘッドライトが山道のカーブを走りすぎていく。

 その五メートル上を飛びながら、道ぞいにくだっていく。



 花田の街並みが見えてきた。

 西に、真っ黒に塗りつぶされているのが、海。水平線でチラチラしているのは、漁船のかがり火。

 手前に星をちりばめたような、住宅街の明かりが広がっている。

 カーテンを開きっぱなしの窓から、電気のついただれかの部屋が見えた。勉強づくえ。アイドルのポスター。あたしくらいの子が住んでるのかな?

 車のライトで国道が明るい。仕事を終えて。買い物も終えて。みんな自分の家をめざして走る。

 ……あたしの家は……?

 二階の出窓にピンクのカーテン。いつものベッドにぬいぐるみ。すぐに物であふれて、勉強するスペースがなくなっちゃう勉強づくえ。

 一階では、ママが夕飯をつくっていて。そのうちパパも帰ってきて。テレビの明るい音と、ママとパパの笑い声。

 あたしは、道ばたに舞いおりた。

 なんだろう、この感じ……。

 胸に、水っぽい物がつまってきて、のどにあふれて、目からポロポロこぼれだす。

「あ、あたしのバカっ! こんなすぐに、ホームシックにかかっちゃって、どうすんのっ!? まだ、妖精になったばっかりじゃない~っ!」

 わかった。これ、妖精の仲間に会えてないからだっ!

 さっさと、妖精の世界に行っちゃえば、こんな気持ちもすぐに消える。

 早く仲間を見つけなきゃ!



 横で、黒い岩が動いた。

 と、思ったときには、岩は、おむすび型の耳を二本、ピンと立てて、あたしにおおいかぶさってきた。

 ニャアアって、ネコパンチ!

「きゃ、きゃあああっ!! 」

 後ろに飛んだら、背中に葉っぱがぶちあたった。

 ふえっ!?

 ぶつかったのは、家の生垣。

 髪にも羽にも、葉っぱをつけて。あたしはガサガサ、ネコが届かない生垣の奥に、もぐり込む。

 ぜえぜえ、生垣を抜けたら、広いお庭に出た。

 なにここ、どこのイングリッシュガーデン? いろんな種類の葉っぱがおい茂っていて、その中を小路が続いている。

 あ……ヨウちゃんち……。

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