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5 真夜中のダンスパーティー
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しおりを挟むなんかヘン。映画館で、スクリーンの中の主人公に話しかけたら、主人公が観客に気づいて、ふり返っちゃったみたい。
……ん? 待って。
ヨウちゃんの足元で寝ているのは、あたし。
じゃあ、ここで、そのふたりを見ているあたしは、だれ?
「来るなっ! 寄るなっ!! まさか、おまえ、綾を仲間にしに来たんじゃねぇだろなっ !?」
「お、落ちついてよ、ヨウちゃんっ! あたしだよっ!! 和泉綾だよっ!」
だけど、ここにいるあたしは、ずいぶん小さいみたい。ヨウちゃんが巨人ぐらい大きく見える。
しかたないから、銀色のチョウの羽をはばたかせて、相手から見える距離まで寄っていった。
ワンピースのすそをふわっと広げて、右腕にとまったのに、ヨウちゃん、まだ怖がって、「うわっ! 」とか、「どっか行け」って、手をふりまわす。
「ひど~いっ! なによ、あたしをさがしに来てくれたんじゃないのっ!? せっかく、あたしのほうから出てきてあげたのに、なに怖がっちゃってんのよっ! それよりヨウちゃん、さっきのあれ、なにっ!? 勝手に、あたしの体になにしようとしたのっ!? 」
「か……体……?」
やっと琥珀色の目が、小さなあたしを、まっすぐに見おろした。
「ま、ま、まさか……おまえ、本当に綾……なのか?」
「だから、そうだって言ってんじゃん!」
「……妖精の……綾……」
たぶん、そういうことなんだと思う。
人間の体に直接羽がはえて、空を飛んで、学校からここまで来た。
だけど、体が重たくて、苦しくてたまらなくなって、このお花畑に倒れこんだ。
意識がもどったと思ったら、あたしの体はふたつに分かれていた。
眠っている人間のあたしと、手乗りサイズに小さくなった、妖精のあたし。
「ば……バカっ! さっきのは、い、息してるか確認しただけだっ!」
そっか。まぁ、そうだよね……。
うす闇の中でもわかるくらい、ヨウちゃんの顔、赤いんだけど。
「それで……あたしの体は、息してた?」
「してた。つまりこれは、ど~いうことだ? 幽体離脱みたいなもん……?」
幽体離脱って。眠っている間に、体の中から、魂だけが抜けだして、あっちこっち飛びまわるっていう怪談だよね?
「え~っ!? せっかく妖精になれたのに、あたし、オバケあつかい~?」
「――いや、待て。そうか……。妖精のタマゴが、綾の中で孵化したのか……」
ヨウちゃんの眉間に、きゅっとみぞができた。
「……ようせいのたまご……?」
「ああ。教室で、とうさんはおまえに、本物の夢ひとつをたくしたって話したよな。そのことだよ。とうさんは、おまえに、妖精のタマゴをわたしたんだ。日本に来てから、はじめて妖精が産んだ、タマゴ」
「そんなの、もらってないよ?」
「だからな。そのタマゴが、おまえがなめたっていう、アメなんだよ」
……え?
「だいたいおまえ、昔っから、どんだけアホっ子なんだっ! 貴重なタマゴを、なんでアメだと思ってなめられるんだよっ!?」
ええええ~っ!?
「し、知らないよ~っ!? アメみたいな大きさで、丸かったら、ふつうはアメだと思うでしょっ? ちゃんと教えてくれないほうが悪いんじゃん~っ!!」
「とうさんは話したと思うぞ。どうせ、おまえの耳から耳へ抜けてったんだろ?」
「だって、だって、あたし、まだ小さくて、迷子になってて。自分に羽があるって言われて、いっぱいいっぱいで! そんなこと言われたってぇ~ 」
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