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5 真夜中のダンスパーティー
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しおりを挟む日がかたむいて、うす曇りの空は、ぼんやり、ぼんやり暗くなる。
おい茂る木々に風が吹きつけ、葉は黒いシルエットになってゆれる。
浅山の頂上近くに一部分だけ、ミステリーサークルみたいに、木々が植わってない場所があった。そこは一面、お花畑。
お花畑の中に、古い赤レンガの遺跡がうまっている。
ヨウちゃんのお父さんが日記に書いてた「ヒースの茂み」って、ここのことかな? 今は、うす闇に染まっちゃって、お花は赤紫じゃなくて、黒みたい。
「妖精さんたち……どこにいるの……?」
ヒースの中におりたったら、硬い葉っぱがチクチクあたしの足をさした。
「お願い、出てきて……」
はじめて空を飛んだせいなんだろうけど、なんだかすごく、息苦しい。
呼吸するのも、つかれるくらい。
「……お願い……あたしも仲間に入れて」
あたしはザッと、ヒースの茂みに両ひざをついた。
やっぱり、おかしい。
体が重たい。
大きな鉛になっちゃったみたいで、その鉛が小さな心臓の上に、ず~んとのしかかってくる感じ。
「く……くるし……」
たまらなくなって、ほっぺたまでお花畑につかりこんだ。
なんでだろう?
息ができない……。
「綾!」
だれかが呼んでいる。
「綾っ!! 」
五メートルくらい遠くに、だれかの黒いシルエットが見える。
その下に、あたしの体が、花畑にうもれて横たわっていた。
不思議な感じ。
映画館で、スクリーンを観ている気分。
ここにいる「あたし」は観客になっていて、花畑にうまってる自分の体と、その自分をのぞきこむ男子の影を、外側からながめているみたい。
「おい、綾っ! いったい、なにが起こったんだっ!? さっきの羽はどこ行った? ま、まさか、死……」
あ……この声。ヨウちゃんだ。
あたし、ヨウちゃんをつきはなしたのに、浅山まで、さがしに来てくれたんだ。
空を見あげたら、おぼろ月が、虹の輪をまとってた。
いったいあたし、どれくらい眠ってたんだろう。
一時間? 二時間?
ヨウちゃんの右手が震えながら、あたしの顔に近づいていく。手のひらが、左のほっぺたをそっとなでる。人さし指の先が、くちびるにふれる……。
「って、な、なにしてんのっ!? 」
さけんだら、「うわぁああっ!! 」って、ヨウちゃんが尻もちついた。
「で、で、出たっ! 妖精っ!! 」
ガタガタ震えながら、こっちを見てる。
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