ナイショの妖精さん

くまの広珠

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4 羽開くとき

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 三人で教室に入ると、窓際から、女子たちのひそひそ笑いがきこえてきた。

 あたしを見たとたんに、リンちゃんは青森さんと目配せ。そうしたら、青森さんの太い眉毛がひそまった。もっと冷ややかな笑いに、女子たちは包まれる。

「……マズイな」

 真央ちゃんが言うと、有香ちゃんもうなずいた。

「……うん。これはちょっとマズイかも……」

 ふたりにつれられて、あたしは廊下側の真央ちゃんの席の前に、座らされる。

「綾……ぶっちゃけきくけど。最近、どうしてそんなに中条と仲がいいんだ?」

「……え?」

 なんかドキっ!

「綾ちゃんて、中条のことが好きなの?」

「え、ええっ!?  ち、ち、ちがうよっ!! 」

 おかしなこと言われたら、夢のヨウちゃん、思い出しちゃうっ!

「た、た、ただの友だちっ!!  って言うか、校外学習からのくされえん?」


「くされ縁ならさ、切っちゃったっていいよね?」

 あたしは、ごくっとつばを飲み込んだ。

「……有香ちゃん……?」

 向かいを見たら、両手に丸いほっぺをのせて、真央ちゃんまでうなずいている。

「女子たちの中条への執着ってスゴイだろ? 特にリン。それがこのごろ、中条がなにかと綾にかまうから、あいつらイラついてんだよ」

「だけど、今までだって、あたし、リンちゃんたちに悪口言われてたよ?」

「今までとはちがうだろ? 今までは綾がドジしたことについて、あーだこーだ言ってたけど。今なんか、綾が教室に入っただけで、悪口言いはじめたぞ」

「わたしね、ちょっと怖いんだ……。女子たちがエスカレートしたら……。ね、大ごとになる前に、綾ちゃん、中条と関わるのやめなよ」

「有香ちゃん……真央ちゃん……」

 ふたりともやさしい。

 あたしのことを、本気で心配してくれてる。


 だけど……。

 あたしはぎゅっと、ひざの上でこぶしをにぎりしめた。

「ありがとう。有香ちゃん、真央ちゃん。でも、ごめんね。あたし、ヨウちゃんのこと、もっと知りたい……」

 妖精でビビリまくる、ヘタレヨウちゃんを見たい。
 麦わら帽子をかぶったガーディニングヨウちゃんも見たい。

 もっと、もっと、いろんなヨウちゃんを見てみたい。


「なんだ。綾ちゃんも、けっきょく顔かぁ……」

「……え?」

 あたしはビクッとして、顔をあげた。

 メガネが蛍光灯に反射していて、うつむいている有香ちゃんの目が見えない。

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