ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 アホっ子ちゃん、がんばる

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 半分ふり返った体制で。琥珀色の目が見開かれている。

「……あ~。えっと……」

 ヨウちゃんは、自分の首の後ろに手を置いた。

「それは、オレの力じゃねぇよ。綾が自分でがんばった成果だ」

「……あたしの……成果?」

「そ~。おまえだって、やればできるってこと」

 琥珀色の瞳がふわっとやわらかくなる。

 ドキッとした。

 冷たい氷が溶けだして、あたり一面がお花畑にかわっていくみたい。
 ヨウちゃんの口元からあふれだした笑みが、顔中に広がっていく。

 あたしのほっぺた、ぽっと熱くなった。

「……え?」

 ヨウちゃんがまばたきした。

「え?」

 あたし、あわてて、自分のほっぺたを花束で隠す。

 カ~っと、ヨウちゃんのほっぺたが真っ赤に染まった。


 え、ええっ!?


 瞬間。腕でほおを隠して、ヨウちゃんが歩き出す。
 長い足でスタスタと。なんか、あたしから逃げてくみたい。

 な、な、な、なにこれっ!?




 教室に帰って、男子たちがもどってくる前に、あたしはアリッサムの花束を四つの花びんにわけて、教室の前の左右の角と、後ろの左右の角に置いた。

「授業中に、校庭に遊びに出るとはなんだっ!」

 担任の大河原先生に連れられて、男子たちが教室にしょんぼりもどってくる。

 ふわっと、やわらかな香りと、オーロラのような虹色の帯が、教室上空に立ち込めた。

 男子たちのほてったほおから、すーっと熱が引いていく。

「……あれ?」

 パチパチまばたきしたのは、誠。

「オレら、なにをあせって走りまくってたんだっけ?」

 大岩も、首をコキコキとかしげてる。

「おまえら、バツとして三時間目が終わるまで、教室の後ろに立ってろ!」

 先生に怒鳴られて、男子たちはしぶしぶロッカーの前にせいぞろい。

 くすくす笑う女子たち。

 あたしとヨウちゃんも校庭にいたんだけど。先生が来る前にもどってきたから、立たされるのをまぬがれた。

 授業中に教科書で顔を隠して、そっと後ろを見たら、一番後ろの席でヨウちゃんは、しらっと、シャープペンをまわしていた。





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