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3 アホっ子ちゃん、がんばる
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しおりを挟む「ねぇ、もしかして、ここの葉っぱって、ヨウちゃんが育ててたの?」
「ちげ~よ。こないだから、かあさんに任されてんだよ。フェアリー・ドクターなら、自分が薬草につかうハーブくらい、自分で育てるべきだって。かあさんは、もともと、とうさんのハーブ園を引きついで、店でつかってたんだ」
「ふ~ん」
「お。ワイルドストロベリー、ランナーがだいぶ出てんじゃん。こいつを土にうめてやると、根づいて小株が増えるんだよ」
ヨウちゃん、小路にしゃがみこんで、なんかしはじめた。
横の茂みからのびているアホ毛みたいに、ぴろんと長い茎と小葉を、ショベルで土にうめている。
「この猫草みたいなのは、レモングラス。で、となりに小さい丸い葉が密集してるのが、タイム。こっちのシソみたいな形の黄緑の葉は、ペパーミント。ミントは繁殖力が強いから、ほかのハーブが荒らされないように、気をつけねぇといけないんだ」
「くわし~んだね」
「こないだまでは、雑草レベルにしか思わなかったんだけどな。葉っぱの性質がわかるようになると、なかなかかわいくなるもんだな」
口元をほころばせて、ミントの葉をさわるヨウちゃん。愛犬の頭をなでてるみたい。
「ぷっ。正真正銘、ガーデニング男子~」
「うるさい、綾! で、なに? なんでうちに来たわけ?」
げ……。
立ちあがったヨウちゃん。あたしの手のリコーダーを見おろして、ニヤ~。
「こ、これはっ !! ちがう! あたしは、このお店のお客さんに来ただけっ!」
「ふ~ん。ちなみに所持金は?」
ぎゃっ! お店に入るには、お金がいるんだったっ !!
ショートパンツのポケットをさぐったら、出てきたのは十円玉二枚。
ヨウちゃん、これみよがしに「はぁ」って、肩で息をついて。
「かあさん、客~」って、ドアの中に入っていく。
「ま、待って! 二十円じゃ、なんにも……」
あわてて追いかけたら、ヨウちゃんは、開いたドアを背中でおさえて待っていた。
「入れよ。リコーダーの特訓終わったら、かあさんのハーブティー、ごちそうしてやるから」
ふんわりやわらかい琥珀色の瞳。
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