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3 アホっ子ちゃん、がんばる
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しおりを挟む「綾ちゃん、まだ、ゴーヤで苦戦してるの?」
顔を向けたら、あたしのつくえの前に有香ちゃんが来ていた。
「はい、あ~ん。わたしの口にゴーヤ入れて」
「うえ~ん。ありがと、有香ちゃ~ん」
有香ちゃんの口に、ゴーヤを入れようとしたら、もどってきたヨウちゃんとバッチリ目が合っちゃった。
うぎゃっ! ズルしようとしてるとこ、見られたぁ!
「い、いいっ! あたし、自分で食べるっ!」
鼻をつまんで、ゴーヤを口にパクン。
に……にが~……。
ヨウちゃんは、なにか言いかけたけど。そのまま目をそらして、リンちゃんと行っちゃう。
「ねぇねぇ、中条君。お昼休みに女子たちで屋上行くんだけど~。中条君も行くでしょ~?」
「……あ~。オレはいい。――誠、校庭にサッカーしに行くぞ~っ!」
……あれ?
女子たちも、呼ばれた誠まできょとんとして、ヨウちゃんを見あげてる。
だけど誠はすぐに、目をクリクリさせて、あはっと笑った。
「おっけぇーっ!! 」
「葉児、オレも行くぜ! オレら敵な。バスケのリベンジだっ!」
大岩が岩みたいな筋肉質な体で動きだしたら、ほかの男子たちも動きだした。
「オレも行くーっ!」
「オレも入れて!」
あっという間に、教室から出ていく男子たちの群れができあがる。
「ちぇ~。つまんない~」
口をとがらせてる女子たち。
なんか、久しぶり。
男子たちと遊びに行くヨウちゃん、見るの。
あたしが給食のかたづけを終わらせて、歯をみがいて水道からもどってきたら、教室の校庭に面した窓に、女子たちが鈴なりになっていた。
「キャーっ! 中条君、カッコイーっ !!」
「次、決めたら、ハットトリックだよっ!」
あたしの足まで、磁石でひき寄せられるみたいに窓際へ寄ってく。だけど、女子たちのたくさんのお尻に、押し出されて、ドンっ。
いいもんね。べつに見たいわけじゃないしっ!
ぶつぶつ言いながら、あたしは廊下寄りの、真央ちゃんの席へ歩いて行った。
真央ちゃんは、図書室で借りてきた『こんな男には気をつけよう』って本を開いて、ゲラゲラ笑ってる。
有香ちゃんも横に座って『手縫いの子ども服』って本を読んでいる。
キャアキャア黄色い声をあげる女子たちと、ふたりはまったく別の世界。
ここが、あたしのバリケード。
ふたりの前に座ったら、有香ちゃんが身をのりだしてきた。
「綾ちゃん、この服、スゴイかわいくない? わたしね、生地買って家でつくってみようと思うんだ!」
「有香はさ、保育士にあこがれてるだろ? 今から、服縫ったり、料理つくったりして、先生の修行するんだって」
「そうなの~。先生になったら、園児たちのおゆうぎ会のお洋服、ぜったいに縫ってあげたいじゃない! でね、このハートポケットの位置なんだけど~」
「うんうん」って本をのぞき込みながら、ふと不思議に思ったことをきいてみた。
「ねぇ、真央ちゃんや有香ちゃんには、好きな人いないの?」
だって、ふたりからそういう話、きいたことないんだもん。
「そりゃ~、いるよ~!」
って、真央ちゃん。
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