ナイショの妖精さん

くまの広珠

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2 妖精のお医者さん

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 ふわ……。

 右肩に、ホタルみたいな銀色の光を感じた。

 え……?

 自分の肩を見て、ドキンと心臓が鳴る。

 妖精の男の子。十歳くらいの赤いくるくる髪の子。
 あたしの肩に座ってる。

 反対側の肩も、ふわっと銀色に光った。

 ホタルブクロの帽子をかぶった女の子が、あたしの肩に両手をのせて、いっしょにブラックベリーの山を見つめてる。

 チカチカ、チカチカ。

 銀色の光の粒はきっと、妖精の羽のりんぷん。
 雪のようにふりそそいで、あたしの背中にもアゲハチョウの羽の輪郭をつくる――。

「い、和泉……?」

「……え?」

 中条をふり返ったら、妖精になった妄想が、頭の中でポンってはじけちゃった。

 もう……せっかく仲間になれた気分だったのに~……。

 ふっと、お花の香りがした。

 生ゴミのにおいが、太陽が地面をこがすにおいにかわってる。

 ブラックベリーの葉っぱの山が、虹色に光りだした。

 オーロラって、きっとこんな感じ。ビジュアルマッピングしたみたいに、葉っぱの表面で、虹色の帯がゆれている。

 葉っぱの下が、ごそっと動いた。

 ごそ、ごそ、ごそ……。

 葉っぱの下から、ツツジの雌しべみたいな腕が出てくる。

 すぐにもう一本、数センチの小さな腕がのぞいた。
 腕が葉っぱをおしのける。ぽこっと、小さな金色の頭がのぞく。

 ふわふわパーマの長い髪。小花のかんむりがよく似合ってる。左右にわけた前髪の下には、透きとおるような白い顔。
 青い寄り目で、つんとおとなびた顔立ち。

 中学生くらいの妖精の少女。

「な、治った……」

 少女は白いロングドレスで立ちあがると、背中をふり返った。背中で閉じていた銀色の羽が、ヨットの帆みたいに張られていく。

 チカチカ、銀色のりんぷんが、少女の細い体にふりそそぐ。



「チチチチチチチ」

「キンキンキンっ!」

 穴の中がにぎやかになった。

 あっちでもこっちでも、スプーンとフォークを打ちつけたような金属音が鳴りひびく。

 あたしの肩にとまっていた妖精たちが飛びあがって、少女の妖精のまわりをくるりくるりと舞いだした。

「治った! ねぇ、治ったよ、中条っ !!」

 あたしも立ちあがって、まだ穴の入り口に立ってる中条の両手を、両手でぎゅっとにぎった。

「ね、見たっ? 見たでしょっ !! あたしたちでも、妖精を治せたよ! あたしたち、本当にフェアリー・ドクターになったんだぁっ!! 」

「あ……ああ……」

 なんか中条の反応、うすい。まばたきばっかり、くり返している。

 まさか、まだ、妖精が怖くてかたまってるのっ !?

 ワッと、あたしたちの両肩を、銀色の帯が横ぎった。

「きゃっ!」

 一瞬だけ目をつぶって。あわてて目を開けて、帯の行ったほうに走る。
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