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2 妖精のお医者さん
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しおりを挟む中条のお母さんからきいた話だと、「フェアリー・ドクター」になるには、条件があるんだって。
ひとつめは、「妖精を見たことがある人」。
ふたつめは、「フェアリー・ドクターの洗礼を受けていること」。
その「洗礼」っていうのを受けてないと、ノートどおりに薬をつくっても、妖精には効かないんだって。
「妖精はね、風や雨と同じ、自然の一部みたいなものなの。
わたしたちも人間だから、大きく言えば自然の一部なんだけど。人間社会で生きていると、なかなかそれを感じられないでしょ?
『洗礼』は、もう一度自然の営みを、わたしたちの体に取り込むことよ。あらためて、自分も自然の一部なんだって、感じることなの」
そうすると、妖精とあたしたちとの間に、隔たりがなくなるらしい。
隔たりがなくなるから、妖精を治す薬を、人間のあたしたちでも、つくれるようになるんだって。
むずかしくて、あんまりよくわかんなかったけど。
ようするに、「洗礼」を受ければ、「フェアリー・ドクター」になれるってことだよねっ!
中条の家から帰るとき、「翻訳ノートがあるんだから、日記は置いてけ」って、ジャイアンみたいな中条に、お父さんの日記帳をぶんどられちゃって。
日曜日になるまで、あたしは家で、お母さんの翻訳ノートの、「フェアリー・ドクターの洗礼」って項目を、何度も読み返した。
もうちょっと待っててね。妖精さん。
あたしがかならず、あなたの病気を治してあげるっ!
「フェアリー・ドクターの洗礼」って項目で、どうしてもわからなかったのが、「ラベンダーとサンダルウッドのミックスパウダーを撒きます」っていう箇所。
ラベンダーは北海道のラベンダー畑で有名な、うす紫色のハーブの花だよね?
じゃあ、「サンダルウッド」は?
ママにきいて、インタネットで検索してもらったら、日本で言う「ビャクダン」っていう木のことだった。
じゃあ、ミックスパウダーをつくるには、ラベンダーとビャクダンをまぜて粉にすればいいの?
でも、どうやれば粉になるの?
だいたい、ビャクダンなんて、どこに植わっている木かもわかんないし。
う~んう~んってなやみながら、百円均一のお店にノートを買いに行ったら、「ビャクダンの香り」って、ラベルのついたお香を見つけた。
これ、つかえるかもっ !!
あたしの目、キラリンっ!
となりにならんでいた「ラベンダーの香り」って書かれているお香も、いっしょに買い物かごに入れて。
あたし、家に帰ると、さっそく勉強づくえの上で、二種類のお香をカッターナイフでけずっていった。
よ~し、お香が粉になった!
これでいちおう、ラベンダーとサンダルウッドのミックスパウダー……だよね。
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