ナイショの妖精さん

くまの広珠

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2 妖精のお医者さん

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「おまえな。このオレに、あのバケモンの、ナゾの病気を治す能力があると思うか?」

「……そ、それは……」

 たしかに、まったくなさそう。

 でもあの子は、そう思っちゃったみたいなんだよね。

「わかったら、きのう見たものはわすれろ。オレもわすれる。オレらはきっと、同じ夢でも見たんだ」

 なにその、強引な解釈。

 頭にチラッと、もうひとりの、琥珀色の目をした人の顔がかすめた。
 妖精の子はもしかして、中条のことを、「顔がよく似ただれか」とカン違いしたのかな……?

「わかった。もう、中条にはたのまない。そのかわり、お父さんに会わせて」

「……は?」

「仕事に行ってるなら、お父さんが帰ってくるまで、あたし、中条の家で待つから」

 これって、賭け。

 記憶の中の男の人が、本当に中条のお父さんなのかは、わかんない。
 でも、琥珀色の目の人なんて、こんな日本のすみっこにゴロゴロいない。

「あたし、小さいころ、中条のお父さんに会ったことがあるの。浅山で妖精にかこまれてた」

 中条の口が開きかける。だけど、また口を閉じて、ごくっとのどぼとけがさがる。

 なによ! 今度は、だんまりっ !?

 ムカついて、頭の血がカァーっ !!

「いいよっ! 協力してくれないなら、校内放送で『中条葉児は、ベイランドのオバケ屋敷でも怖がるビビリだ!』ってさけんでやる~っ!! 」

「う、うわぁああっ  待て、待て、待てぇ~っ !!」

 あたし、肩で息をついて、ぜえぜえ。
 中条もこめかみから汗を流して、ぜえぜえ。





「はぁ」と息をはきだして、中条は、両手をジーンズのポケットにつっこみ直した。

 また無視されるのかと思ったけど、なんかちがう。目に力がこもってない。
 ただ、足元の小石を見おろしてる。

「……とうさんは、死んだ。オレが四歳のときに。事故で」

「え?」

「……ついてこい」

 中条が背を向ける。グレーのランドセルを片肩にかけた黒いTシャツが、大またで歩きだす。

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