ナイショの妖精さん

くまの広珠

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6 地下からの招待

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――あ、あの! これ、一日遅れちゃったけど、バレンタインデーのチョコレートっ!! ――


 家から持ってきた紙袋から、チョコの包みをつかんで、あたしはヨウちゃんの胸につきつけた。


――そ、それからっ! あ、あの、あたしのことも、もらってくださいっ!! ――


――あ、綾っ!?  おまえ、な、なに言ってっ!? ――


 あたしはさらに、紙袋の中に手をつっこんだ。

 両手でさしだしたのは、ブリキ缶。上にバラの花みたいな、緑色の葉っぱが植わっている。


 センペルビウムの綾桜あやざくら


――これね、バラの花みたいでしょ? でも、葉っぱなんだって。しかもね、冬でも枯れない葉っぱなの。だから一年中、このままで咲き続けるの。

あのね、あたし、ヨウちゃんが大好き! この先、何度、桜の季節が来ても、ずっとずっと、ヨウちゃんのそばにいたいですっ!!  ヨウちゃんもおんなじ気持ちなら、この綾桜をもらってくださいっ!――


 気づいたら、あたしの体はヨウちゃんの体に包まれてた。

 ほっぺたにくっつく、モッズコートのあったかい胸。ヨウちゃんちの柔軟剤のにおい。



   ●



 ずっとずっと、ヨウちゃんといっしょにいたかった。

 いつまでも、ふたりで手をつないで、歩いて行けると思っていた。

 なのに、あたしはヨウちゃんと別れることを選んだ。



 妖精の羽を持ち続けるために。いつかヨウちゃんになにかあったとき、羽のりんぷんで癒してあげられるように。

 目から血みたいにこぼれるのは、あたしの涙。

 ヨウちゃんの涙。


 大好き。大好き。大好きっ!


 言葉が口から出ないで、のどに落ちて、あたしの胸をズキズキと刺す。



   ●




 だから、夢かと思った。

 ヨウちゃんが「愛してる」って言ってくれたとき。

 あたしの手のひらを包み込んで。目をきつく閉じて。


――オレは……綾を守りたい……――


 あたしの胸に、ピンク色のあかりがともった。

 ヨウちゃんのお母さんが入れてくれたマロウティー。『夜明けのハーブティー』。


 暗かった空に朝日があがって、明けていく。

 グラスを染める、あざやかなピンク色。


 あたしも……ヨウちゃんを守りたい……。



   ●



 ヨウちゃんがいて。誠もいて。浅山のヒースの茂みで。

 ブルームの灰をつかって、風を起こしてみたりして。髪の毛がぼうぼうになっちゃって。

 みんなして、ゲラゲラ笑って。


 真央ちゃんの茶道部のお茶会に、ヨウちゃんとおよばれしたり。

 ハロウィンの仮装にヨウちゃんまで巻き込んで。嫌がられたり。

 そういう小さな毎日が、キラキラキラキラ、かがやいて見える。


 照れてるヨウちゃんが好き。

 クールなふりして、そっぽ向いてるほっぺたが好き。

 お父さんの本を夢中で翻訳する、琥珀色の瞳が好き。

 あたしのバトンを受け取って走り出した、広い背中が好き。


 だけど、ふんわり笑顔のヨウちゃんが、一番好き。


 もうかなしい想いをさせたくない。

 あたしだって、したくない。



 だけど……あれ……?



 あたしって、どんな顔……?






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