ナイショの妖精さん

くまの広珠

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6 地下からの招待

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 芝生広場で、小学生たちが追いかけっこをしている。

 キャ~キャ~笑いながら逃げる、子どもたち。オレンジ色のカボチャの着ぐるみを着ていたり、魔女のとんがり帽子をかぶっていたり。

 鬼になった男の子は、白い布を頭からかぶったオバケのかっこう。両手をふりあげて、そばの子に向かっていく。

 白い猫耳のカチューシャをつけていた女の子が、ベタっと転んだ。白いボアのショートパンツにくっついているのは、細くて長い猫のしっぽ。


「つ~かまえたっ!」


 オバケの男の子が、女の子の背中にタッチした。


「次は、杏あんちゃんが鬼だ~」


 まわりに群がった子たちは、キャアキャア笑って、またちらばる。女の子が猫耳をつけ直して立ちあがったころには、その子のまわりには、もうだれものこっていなかった。


 う……。なんだか、昔の自分を見ているみたい。


「あ。あの子、杏ちゃんって呼ばれてる子だよ。同じ一年の由利ゆりちゃんと菜奈ななちゃんとよく、児童館に遊びに来てくれる常連さん」


 あたしと同じビニールシートに座って、子どもたちに配るお菓子をかぞえながら、誠が言った。

 見あげれば、青空にトンビが飛んでいる。少し重たい雲が出てきたけれど、まぁ、まずまずのピクニック日和。


 十月三十一日。

 児童館の事務員さんたちと、あたしたち中一のボランティア組は、小学生たちを引率して、浅山のてっぺんまで来ていた。



「ねぇ、誠。由利ちゃんと菜奈ちゃんって、どの子?」


「ほら、あのアリスのカッコした子が由利ちゃんで、菜奈ちゃんはウサギの着ぐるみ着てる子」


 そういう誠は、頭から水色のフードかぶっていて、そのフードには、牛みたいなツノがついている。コレ、あたしがつくったフードで、いちおうモンスター。


「やっぱり、自分がつくった服を着る子どもたちって、萌える~」


 有香ちゃんは、きょうはコンタクト。白雪姫のドレスのスカートをふんわり広げて、芝生に座って。二年生の子の大きなリボンを、頭につけ直してあげている。

 真央ちゃんは、ゾンビのかっこう。今は、海賊の服を着た四年生の男子たちとバトミントンに熱中。

 子どもたちの仮装衣装やアクセサリーは、手芸部の先輩たちにもお願いして、手分けしてつくったんだ。


「杏ちゃんはさ、やさしい子なんだけど、ちょっと動きがゆっくりなんだよね。なんていうか、いつもみんなより、一歩、出遅れるっていうか。そのせいで、ゲームすると、たいてい負けちゃうの」


「……誠、ごめん。あたし、抜けていい?」


 あたしは、小分けして袋づめしていたアメを、ビニールシートの上に置いた。


「うん。あとはオレひとりでできるけど。和泉、どこに行くの?」


「ちょっと。鬼ごっこ」


 立ちあがると、セロハンでできたアゲハチョウ型の羽が、あたしの背中でゆれた。

 ひざ丈の白いワンピースは、うちのクローゼットから出してきたもの。だけど、有香ちゃん作の羽を背負っただけで、だいぶ妖精っぽくなった。

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