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1 作戦会議
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しおりを挟む「へぇ~」
誠は首をかしげかしげ、虹色の花びらを指先でつついている。それから、花びらをつまんで、まぶたにあてた。
「カレンデュラの花よ。この場所で、数日間にあったことをうつしだせ」
オレがとなえると、カレンデュラの花びらが、ぽうっと虹色に光った。
虹色は、フェアリー・ドクターの魔力がこもったあかし。
ヒグラシが鳴く外人墓地。
ポケットに手をつっ込んで、誠のようすを見ていると、誠のほおはだんだん青白くなってきた。
誠がガバッと、木を見あげる。奥歯をかちあわせ、木の上で風を受けるヤドリギを見すえている。
「……見えたか?」
「……オッケ。見えた」
誠は、まぶたから花びらをはずした。こめかみを引きつらせて、足元を見つめている。
けど、こいつ、やっぱり強いな……。
オレみたいに腰を抜かすこともなく、しっかりと足で地面を踏みしめている。
「和泉以外の妖精……はじめて見たよ。あと、ハグ。葉児や和泉が怖がるのもわかる。映画に出てくる悪魔みたいだな」
「ハグの日本語訳は、鬼婆。実体のない黒いモヤみたいなもんだけど、形を持ったら、鬼婆の姿になるんだろうな。
――で、わかったろ? 妖精たちは、あのヤドリギに閉じ込められてる。ハグはたぶん、オレから奪ったチコリの薬をつかったんだ。けど、今のオレにはどうすることもできない。同じ薬をつかえば、ヤドリギにかけられた『閉じ込める力』を解除できるけど、その薬は、来年の夏至にならないとつくれない」
「ハグから薬を取り返すか、妖精のりんぷんをつかうか、二択ってこと? でも、中の妖精たちが、りんぷんをつかうのは、ムリそうだよね。あれじゃ、羽を動かせないもん」
「……それに……もしかしたらあいつらは、自分たちのりんぷんに、フェアリー・ドクターの薬を解除する力や、『癒す』力があること自体、知らないのかもな」
オレはこめかみをかいた。
「前に、妖精がやけどをしているのを、治したことがあるんだ。取り巻きの妖精たちは、りんぷんを出しもせずに、やけどを負った妖精を見守っていた。……おかしいよな」
「あるいは。妖精のりんぷんは、妖精には効かない、とかね」
「……え?」
「ほら、蛇はさ、自分の毒で死なないじゃん。それとおんなじでさ。妖精の体には、りんぷんの抗体があるのかもよ」
「ありうるな……」
「もちろん、和泉のりんぷんなんて、つかえないし。妖精を助けるには、ハグからチコリの薬を取り返すしか方法がないわけだね。あとは、鵤さんのこと。葉児、鵤さんがハグにつれ去られたとき、どんな感じだったの?」
「……それが……鵤さんは消えたんだ。オレの目の前から、こつ然と」
「どんなふうに……?」
「ハグが鵤さんの口をおさえた。そのとき、鵤さんは苦しそうな顔をして……で、『カリ』って、なにかをかじるような音がした。けど、ハグはなんにも持ってなくて……。いや、まさか……」
綾の言葉が、頭をかすめた。
――リンゴを食べたの――
綾は、ハグに冥界のリンゴを食べさせられたことがある。そのとき、綾の体は鏡の世界に入り込み、こっちの世界から消えた。
「まさか、鵤さんも鏡の中に?」
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