ナイショの妖精さん

くまの広珠

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6 おとなになるということ

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 は、破壊っ!?


「で、でもっ! 綾はオレのためにっ! 羽を守ってきてっ! そ、それなのにっ!! 」


 思考回路が遠ざかる。指先が凍てつくように冷たい。


 チチチチチチ……。


 頭上からまた、スプーンとフォークをかちあわせるような声がきこえてきた。


「妖精……?」


 そういえば、浅山の妖精たちはどこに行ったんだ?

 ヒメはなぜ、書斎からフェアリー・ドクターのビンを持ち去ったんだ?



 チチチチチチ……。

 キンキンキンキン……。

 チンチンチンチンチン……。


 なんなんだ、これは?

 無数の妖精たちが、空でいっせいにわめいているような……。


 耳鳴り? 幻聴?


 それとも……本当にどこかで……?



 オレは制服の後ろポケットから、小ビンを取り出した。


「……葉児君、それは?」


「カレンデュラのドライフラワーです。花びらをかざせば、過去にその場所でなにがあったか見えるようになる……」


「透視能力か。でも、今、なぜそれを……?」


 小ビンのコルクを抜いて、虹色の花びらを一枚、指先でつまむ。


「カレンデュラの花よ。この場所で数日間にあったこと。妖精にまつわることをうつしだせ」


 細くて小さな花びらを、まぶたの上にかざす。



 わっと、目の中に映像がとびこんできた。

 オークの木の根元に、黒いローブをまとった者が立っている。

 ローブのすそは、足がすべて隠れるほどに長い。そで口は広がっていて、指先まですべて隠している。鼻まで深くかぶったフード。下の顔は影になって見えない。


 ……影……?


 人の顔などない。

 黒いモヤ。目もなく鼻もなく口もない。ただの黒いモヤのあつまり。


「は……ハグっ!? 」


 腰の力が抜けて、尻もちをついた。

 見あげたオークの葉の中に、ヤドリギの葉が見え隠れしている。


「う、うわぁあああっ!! 」


 カレンデュラの花びらをかざして、オレはさけんだ。


 映像が見える。

 木の枝にからみつく、無数のヤドリギ。

 その球状をしたひとつひとつの中に、妖精たちが足を丸め、縮こまっている。

 内部が虹色に光るのは、チコリの魔力が宿っているあかし。


「……閉じ込める力」


 ヤドリギの内側には、ゴースの針がつき立っていて、中で妖精が少しでも身動きすれば、その羽を刺すようになっている。


「こ、こ、こ、これをっ!?  ……は、は、ハグが……っ!? 」



 ひゅっと、目の前をするどい風がかすめた。

 かざしていた花びらが、風に飛ばされる。

 映像がかき消える。

 右ほおにピリッと痛みを感じて、指をあてると、中指の先に赤い血がついた。



「……え?」


「葉児君、逃げろっ!」


 鵤さんのするどい声。

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