ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 おかえり、ヨウちゃん。

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 廊下に出ると、誠がトイレから出て歩いてきた。


「あれ? 和泉? ――葉児も、なに?」


 え? ヨウちゃん?


 ふり返ったら、ヨウちゃんまで廊下に出てきて、あたしの後ろに立っている。


 いつの間に……?


 ヨウちゃんは、首後ろに手を置いた。


「……誠。オレたちまた、つきあうことになったから」


「え~? なに? ふたりして、わざわざその報告~? だから、そんなん、教室に入ってすぐに気づいたって。ふたりとも、お互い、目で追いかけあってんじゃん。まぁ、それは前から、そんなもんだったけど。きょうは、すごいあからさまにさ。葉児なんか、ムダにニッコニコしてるしさ~」


 え~? そんなに、バレバレだったの~?


 はずかしくて、横目でヨウちゃんを見たら、ほっぺた赤くして、視線をそらしてる。


「めんどくさいから、オレに気をつかわないでよね。イチャつきたいなら、勝手にどうぞ~」


 誠はズボンのポケットに両手をつっ込んで、すたすたと廊下を歩き出す。


 でも……誠。人がラブラブなの見てるのって、ものすごくつらいのに……。


「誠、ありがとな」


 ヨウちゃんがつぶやいたら、誠は足をとめた。


「べつに、お礼なんていいけど。あ。でも……もし、その気があるなら、オレ、ふたりにしてもらいたいことがあるかも……」



「誠! なんでも言ってっ!! 」


 あたしが食いついたら、誠は、口を横に開いて、ニカっと笑った。


「じゃあ、ふたりのファンタジーにオレもまぜてよ」


「……え?」


 となりのヨウちゃんと顔を見合わせる。


 ファンタジー……?

 って。フェアリー・ドクターのこととか。妖精とか。ハグのこととか?


「いや……誠。だから、それは危ないんだって。ハグはもう、鏡の外に出てきている。どこで、オレらをうかがっているかわからないうえに、これから先、何を仕かけてくるかもわからない。関わったら、おまえだって、どうなるかわからないんだぞ」


 ゾクッとした。


 イヤだ……もう、あんな地獄を見たくない。


「でもさ~。ひとりよりも、ふたり。ふたりよりも三人。多いほうが、いざというときに、心強いだろ? だからオレも協力したいんだよっ! ……って気持ちもあるけど……。ごめん、ホントはそれだけじゃないかな」


 ……え?


 誠は「へへへ」と笑って、こめかみをかいた。


「だってさ。中学にもなると、みんなファンタジーなんて、言ってらんなくなるじゃん。頭ん中がおとなになっちゃって、目に見えるものだけがすべてなんだって、思い込んじゃう。

でも、妖精はいるんだろ? 和泉は妖精になれるんだろっ? まだ世の中には、オレの知らない不思議がいっぱいあるんだっ! オレ、ふたりの話をきいて、ちょ~ワクワクしたんだよっ!! 」





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