ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 おかえり、ヨウちゃん。

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「うちも知りたい。中条のヤツ、目に見えて明るくなったよな。てか、元にもどった。で、綾も中条のこと『ヨウちゃん』呼びにもどってる。そのわけは……?」


 真央ちゃんも、あたしのひとつ前の席からふり返って、下からじぃぃ~。


「え……。えっと……。それは……デスね……」


「そりゃ、葉児とヨリをもどしたからに、決まってんじゃん」


 さらっと明るい声に顔をあげると、誠があたしのとなりの席にもどってきていた。


「あ、あれっ!?  誠も後ろで話してたんじゃ……」


「ここ、オレの席だもん。いつもどって来ようと、オレの自由だもんね~だ」


 誠、ほっぺたをぷっく~。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 綾は、誠とつきあってるんでしょっ!? 」


 有香ちゃんがあたしたちの会話に割って入った。


「ざんねん。オレはこないだ、和泉にふられてます~」


「ええええ~っ!? 」


 有香ちゃんと真央ちゃんのさけび声に、あたしの耳、キーン。

 あんまり大きな声だから、クラス中の注目をあつめてる。


 あ~あ。このおどろかれっぷりも、久しぶり。


「ウソでしょっ!?  いつ? ぜんぜんわかんなかった!」

「ならどうして、ふたりとも、そんなに仲良さそうなんだよ!」

「いいじゃん。そういうのは、人それぞれなんだから」


 誠は、くったくない顔でケラケラ。


 ……誠。


「あ~。そろそろ、五時間目がはじまる時間か~。オレ、その前におしっこ行ってこよっと」


 席からはなれた誠を追って、あたしも立ちあがった。


「誠! 待ってっ!」




「――ねぇ、きこえた? 今の話……?」


 教室の後ろのドアに手をかけたところで、女子たちの声が耳にとびこんできた。


「和泉さん。誠から手を引いて、中条君にのりかえたんだって」

「のりかえ早いよね」

「軽すぎ。てゆ~か。実は重複なんでしょ~?」

「ヤダぁ……こっわ~」

「お子ちゃまのくせに、やることあざとすぎ」


 う……。ぜんぶきこえてるんだけど。

 てゆ~か、これ、わざとあたしにきこえるように、言ってるよね?


「あんたたちさぁ……」


 ふり返ったら、有香ちゃんが席から立ちあがって、女子たちをにらんでた。真央ちゃんもほおづえをついて、女子たちににらみをきかせてる。

 だけど、バンって、別のところから音がして、クラスメイトたちの視線は、窓際の前の席にあつまっていった。

 リンちゃんが、つくえを平手打ちしている。


「ちょっと、うるさいんだけど。期末テストの勉強のジャマになるから、静かにしてくれない?」


「だけどさ~。リンだって、中条君のことが好きだったんでしょ? ムカつかない~?」


 山下さんと西宮さんが、リンちゃんにすり寄っていってる。

 ツインテールをかきあげて、リンちゃんは冷たく息をはきだした。


「だから、なに? なにを、今さら? 和泉さんと中条君のホントの仲なら、みんなだってとっくに知ってんじゃん。ちょっと体育で活躍した中条君を見たからって、なに? 今さら中条君に萌え直したからって、和泉さんに嫉妬しちゃったわけ?」


 教室が静まり返った。窓からアブラゼミの声がきこえてくる。

 あたしは、チラッとロッカーの前を見た。

 男子たちにかこまれて、ヨウちゃんもリンちゃんを見ている。

 あ……目が合う。口のはじをゆがめて気まずそう。


「あの……リンちゃん」


 あたしの声に、リンちゃんは、ぷいっとそっぽ向いた。ほおづえをついて隠した、リンちゃんのほっぺた、赤い。


「……それより。カッコイイ中条君をつれもどしてくれたのは、和泉さんなんだから。みんな、感謝したら?」


 女子たちは、顔を見合わせてから、うつむいた。


 ……リンちゃん。ありがとう……。

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