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2 もしも、叶うものならば
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しおりを挟む「ごめんなさい~……ヨウちゃ~ん……っ!! 」
エンエン泣いても、何度しゃくりあげても、あたしの罪はなくならない。
大切なのに。
ぜったいに傷つけたくないのに。
あたしまた、ヨウちゃんを一番に傷つけてる……っ!
目の前で丸まっているのは、うつりこみのヨウちゃんの背中。
両手をまわしても、なんにもつかめない。
幻のヨウちゃん。映像だけのヨウちゃん。
抱きつきたい。ぎゅって。
なのに、あたしの手の中にはなんにもない。
「……綾」
琥珀色の前髪がゆれて、ヨウちゃんのまぶたが持ちあがった。琥珀色の瞳から、涙のしずくがこぼれた。
「おまえ……本当に……ここにいるのか……?」
あたしの肩の後ろに焦点をあてて、ヨウちゃんが腕を前にさしだす。
大きな手のひらは、あたしのほっぺたをつき抜けて、宙をかいた。
「い……いるよ……」
あたしはその腕をつかんだ。つかめない。空気しかない。
だけど、ヨウちゃんは、ふわっとほほえんだ。
「綾……。なんだか……久しぶりだな……」
「……え?」
「綾の声が、すごい耳元からする……」
きゅうっと胸をしめつけられた。
「……ごめん。なんかオレ、もういいや。ハグのこととか。そのために、ずっとガマンしてたこととか。もう……ぜんぶ投げ出したい」
「……うん」
「綾と……もっと話したい……」
「……うん」
「綾のこと……『和泉』って呼ぶのも、もうヤダ……」
「……うん」
「誠に……綾を取られてるの……すげ~ヤダ」
ドキンと心臓が鳴った。
……ヨウちゃん……?
「できるなら……オレ……やっぱり綾と……」
ヨウちゃんのくちびるが震えた。そのままうつむく。かんだくちびるに涙が伝っていく。
「ね、ねぇ! ……もう、ガマンするのやめよう!」
あたしは、こぶしに力を込めた。
「こんなふうに、ハグにバレちゃって、ごめんなさい! でも、あたしだってもうイヤなのっ!! あたしだって本当は、もっと、もっと、ヨウちゃんといっしょにいたいのっ!! 」
「……綾……」
ふわっと、琥珀色の前髪がアップになった。
……あれ?
ヨウちゃんの顔が前のめりになって、あたしの顔におおいかぶさってくる。
うつりこみのヨウちゃん。幻のヨウちゃん。
ヨウちゃんのくちびるが、あたしのくちびるに重なる。
……え?
ふれた感触はなかった。
あたしのくちびるは、スカっと空気をかいた。
え……? でも、今……?
ヨウちゃんは、あたしの肩をすり抜けているのも気づかないで、うつむいてる。
今の……偶然……?
だって……ヨウちゃんには、あたしの姿が見えてないんだから……。
「……こんな話してる場合じゃねぇよな」
ヨウちゃんは、ごしっと、腕で自分の目元をぬぐった。
「綾が、本当に鏡の中に閉じ込められてるなら、さっさと救い出してやらなきゃな。―綾、ハグは? ヤツは今どこにいる?」
「あ……そ、それがね、わかんないの。ハグは学校から、あたしのことを追いかけてきたんだけどね。とちゅうから、追うのやめたみたいで、消えちゃったの」
「……消えた? おまえをわざわざ鏡の中に呼び込んで。思惑通りに、閉じ込めておきながら、消えたのか? あいつ……何を考えてる?」
ヨウちゃんの眉がひそまる。
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