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6 ヤドリギの下で
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しおりを挟むハグをさがして、あたしの足は勝手に砲弾倉庫跡に向かっていた。
きっと、いつもヨウちゃんと行っている場所だから。
はじめてふたりで妖精を見たのも、この場所だったし。
告白されたのも、このヒースの茂みだった。
あたしは、銀色のチョウチョの羽をゆっくりと閉じて、ヒースのごわごわの葉に足をうずめて、おりたった。
黒い影をつくる葉を、夜風がゆらしてる。
ヒースの茂みの真ん中に、黒い人影が立っていた。
筋肉質で背が高い男の人。茂みをかきわけて、あたしのほうへ歩いてくる。
茶色い背広を着て、胸元にはループタイ。中折れ帽子の下からのぞく琥珀色の髪。
――だいじょうぶ。きみの背中には羽がある――
胸にしみわたる低い声がきこえた気がした。
――その羽を、きみ自身が信じられなくなってしまったら、きみの羽は抜けてしまうだろう。羽があることをわすれないで。そうすれば、いつかきっと、きみは空を飛んでいけるから――
ヨウちゃんのお父さんが、琥珀色の瞳でほほえんで、あたしの手のひらにコロンと白い妖精のタマゴを置く――。
ヒースの上をわたる夜風が、冷たくあたしのほおを刺した。
お父さんは、もうここにはいない。
白い目を見開き、口元をにたりとゆがめて、あたしのもとへ歩いてくるあいつは……ハグ。
「アヤちゃん! 迎えに来てくれたんだねっ !!」
英語なまりのある低い声で、ハグは両手を広げた。
「さあ、わたしの魂をその体に迎え入れてくれ! ヨージと何をたくらんでも、ムダだからね。きみが墓地へわたしを導き、ヨージがわたしを、この体の外に追いやったところで、わたしはすぐにきみの体に入るだろう。きみはもう、逃れることのできない、小さなか弱い虫ケラなのだよ」
……バレてる。
アホっ子のあたしが立てた計画なんて、あっさりと見抜かれちゃってる。
だけど、あたしはアホっ子だから、計画どおりに動くことしかできない。
あたしは羽を広げて、飛び立った。
ハグが手をのばす前に身をかわして、ヒースの茂みから、たった一メートル上空をふわりふわりと飛んでいく。
ハグに捕まえられないほど、高くじゃなく。
ハグに追いつかれないほど、速くじゃなく。
「おお! アヤちゃん! なんて、すばしっこい子なんだっ! やっぱり、その羽はすばらしい 」
ハグは、にやけた口のままで追ってくる。
「きゃっ!」
登山道へ出ようとした太ももを、杖でたたかれた。
「い、イタ……」
左の太ももをおさえて、あたしは茂みの中に落っこちた。
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