ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 真実を追いかけて

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 おばさんは、スマホをスクロールさせて、指をとめる。


「やっぱり。橋本さんなら、レモンバームを育ててるわ。ほら、こないだのブログでも、写真をアップしてるもの。すぐ近くだから、直接おうちをたずねてみる?」


「は、はいっ! 場所、教えてください」


「じゃあね。ほら、この地図の画面見える。今ね、うちがここなんだけど……ここの道をまっすぐ行って。小学校の角を右にまがって。そしたら、左にファミマがあるから……」


 おばさんが、スマホの地図アプリを開いて、説明してくれる。


「……わかった?」

「……う、う~んと……」

「なにか紙ある? 地図書こうか?」


 けっきょくノートの切れ端に地図を書いてもらって。あたしは、「ありがとうございました」と頭をさげた。


「こちらからも、橋本さんに、あなたが行くこと、電話しておくわね」


 わ……やさし~。


「あ、ありがとうございますっ! ありがとうございます! ありがとうございますっ!」


 張り子の虎みたいに、ぺこぺこ頭をさげて、あたしは道を歩き出す。


 よかったっ!

 いい人に会えて、本当によかったっ!!


「あ、あなた! 道、そっちじゃないわよっ! 小学校の角を右!」


 おばさんがあわてて追いかけてくる。


「ああっ!?  ま、まちがえたぁっ!」


 ホント、あたしって、どうしてこう、アホっ子……。


 

 大脇小学校の角を右にまがって。コンビニの横を左にまがって。

 さっきよりは太い通り。車道の左右に、緑色に舗装された歩道がちゃんとついている。

 三本目の横道が見えてきた。

 横道を越えてすぐ左が、たしか、橋本さんの家。


「うわ~……」


 あたしは、茅葺のついた山門を見あげた。


 お……お寺……?


 まわりの塀も、ブロックじゃなくて、竹。これ、「竹囲い」ってやつ?

 山門に「橋本」って、木彫りの表札は出てるけど。

 木戸はガッチリしめきられていて、まるで金庫の扉みたい。


 わ~ん! 胃がキリキリしてきたぁ~っ!!


 人んちの前を行ったりきたりしてたら、おじいさんが自転車をこいで通りすぎた。

 ふらふら左右にゆれながら、あたしをふり返っている。


 って、こんなトコでチャイムも押さずにいる時点で、あたし、すでにヘンな人っ!?


 え~い! ヨウちゃんのためだっ!!


 勢いよくチャイムを押すと、ピンポーンと音が外まで響きわたった。


「はぁい~」


 山門についたインターホンに、女の人の声が出る。

 おばあさんかな? おっとりしてて、ちょっとしわがれている。


「あ、あの……あたし、レモンバームがほしくて来たものです……」


 うう……自己紹介、ナゾすぎる……。


「ああ、はい。今開けますよ」



 しばらくして、ガタタと、山門の戸が開いた。

 立っていたのはほっそりした、白髪のおばあさんだった。ほおはこけていて、首にアコーディオンみたいに何重もしわが寄ってる。

 小花のちりばめられた青いワンピースに、グレーの厚手のカーディガン。分厚い手編みみたいなくつ下に、サンダルをはいて。


 なんていうか……イギリスの民家の、暖炉の前に座っていそう……。


「小松さんが電話で話してたのは、あなたね。お名前は?」


 おばあさんがにっこり笑うと、しわに囲まれた目がたれさがった。


「あ……あの……和泉綾ですっ!」


「わたしは橋本富子はしもととみこです。どうぞ、中に入って」


「あ、ありがとうございますっ!」
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