ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 真実を追いかけて

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 なんで、塾っ!?

 こんなときに、塾っ!?

 今、のんきに勉強とかしてる場合っ!?


 ふだんから、算数の文章問題なんか理解できないのに。きょうなんて、日本語がぜんぶ、象形文字に見える……。


 ぼんやりシャープペンをカチカチしながら、授業が終わるのを待って。時間が来ると、あたしは真っ先につくえから立ちあがった。

 塾のカバンの中に、ペンケースとノートと算数ドリルとつっこんで、走り出そうとすると、「綾ちゃん」ってとめられた。

 ふり返ったら、碧あおいちゃんと莉那りなちゃん。


 おかっぱの髪にしてる子が碧ちゃんで、マッシュルームみたいなボブ頭が、莉那ちゃん。

 ふたりともおとなしくて、いつも、教室のはじのほうで、くすくすナイショ話してるから、最初は「ふたごかな?」って思ったぐらい。

 きいたら、駅向こうの大脇おおわき小学校で同じクラスなんだって。

 最近、塾であたしはよく、このふたりと話すかな。


「ねぇ、綾ちゃん、お昼はまっすぐ家に帰るの? いっしょに駅前のマック、寄ってかない?」

「莉那ちゃんがね、スマホでクーポン、ゲットしてくれたから。ポテトがタダだよ」


「えっ  ご、ごめん。また今度。あたし、いそぐ用事があって……」


 言いかけて、「あっ!」とさけんだ。


「莉那ちゃんって、たしかガーデニングが趣味って言ってたよねっ!?  ハーブも育ててる 」

「ハーブ? えっと……うん。うちのベランダにあるよ」


 やった!


 だって、「レモンバーム」って、わりと人気のあるハーブ。春や秋は、ホームセンターの園芸コーナーにもならんでる。


「ね、レモンバームは育ててない?」


「え……? うちにあるのは、ミントとローズマリーだよ。前にワイルドストロベリーも育ててたけど、枯れちゃった」


 がっくり。

 そんなうまくはいかないか……。


「ハーブかぁ~。そういえば、うちのお向かいさんが、ハーブ、たくさん植えてるかも」


 碧ちゃんが、自分のあごに人差し指を置いた。


「ホントっ!?  碧ちゃんちって、どこっ!? 」


「……え? もしかして、綾ちゃん、わざわざうちのお向かいまで、見に来る気?」


 碧ちゃんと莉那ちゃん、眉をひそめて、顔を見合わせてる。

 そりゃそうだよね。なんで、たかだかハーブひとつで、知らない人の家まで、のぞきに行くって話だもん。


 だけど今は、気にしてるヒマない!!


「緊急なの。お願いっ! 場所だけでいいから教えて! 地図に描いてっ!! 」


 かばんにしまったノートをまた出して、碧ちゃんの前に広げると、「わたしは、マック行くから、家までつれて行けないよ?」と言いながらも、地図を描いてくれた。

 駅の向こう側。商店街から、ちょっと入っていった住宅地。

 あの辺りは細い道路が入り組んでいるけど。行ってみれば、なんとかなるかも。


「ありがとうっ!」


 ノートを閉じて、胸に抱える。


「バイバイ、綾ちゃん」

「また、次の塾でね~」


 ふたりに手をふって、あたしは、塾の外にかけだした。

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