ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 真実を追いかけて

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「許せないっ! ハグだかなんだか知らないけど、ぜったいに許せないっ!!  だって、あいつ、ヨウちゃんを妖精たたきにあわせるために、妖精の子の羽まで切ったんだよっ!

書斎の薬をぜんぶ壊して。庭も、植物園まで荒らして。しかも、それをぜんぶ、ヨウちゃんのせいになすりつけるなんてっ! やりかたが卑劣すぎるっ!!  世の中、やっていいことと悪いことがあるよっ!! 」


 あたしはクっと肩の力を抜いた。目を閉じると、背中で銀色の光がチカチカとまたたきだす。

 銀色のりんぷん。人間のあたしの体の中にいる、妖精のあたしの羽。あたしの背中に、銀色のアゲハチョウの羽がはられていく。


「ヨウちゃん、だいじょうぶ! あたしがすぐ、りんぷんで治してあげるからっ!」


 だって、妖精の羽のりんぷんは、万能薬っ!

 レモンバームの薬がなくても、あたしならヨウちゃんを治してあげられるっ!


「アホかっ!!  やめろっ!! 」


 ヨウちゃんがさけんだ。


「綾! その羽を、さっさとしまえっ!!  それこそ、ハグの思うつぼだっ! あいつは、わざとオレを傷つけて、おまえのりんぷんで治させようとしてるんだっ!! 」


「……え?」


 肩に力を入れて、あたしは羽を背中にしまった。


「……なんで……?」


「りんぷんをつかいきったら、妖精は消滅するだろ。あいつはそれをねらってる! あいつは、オレのせいで、りんぷんをつかいきって、消滅するおまえを見たいんだよっ!!  なにより、おまえが消滅して苦しむ、オレの姿を見たいんだっ!! 」


「ひ、ひどい……」


 そんな卑劣な人間って、世の中にいるの……?


 目を赤くして、あたしを見つめるヨウちゃん。その肩や腕や背中につけられた無数の傷……。


 いるんだ……。


 だって、あいつは……人間じゃない……。


 恨みそのものが、形を持ったような存在――。


「……綾ちゃん」


 鵤さんがため息をついた。


「きみの許せない気持ちは、よくわかるよ。わたしだって同じだ。だけど今は、落ちついて、ひとつずつ、解決していこうか。

まずは、レモンバームの葉をさがそう。フェアリー・ドクターの薬をつくって、葉児君のケガを治す。わたしは、業者にかけあってみるよ。レモンバームの鉢がどこかにあまっていないか、きいてみよう」


「あ、あたしも、だれかレモンバームを育ててる人がいないか、さがすっ!」


 ぐっと、こぶしをかためたとき、ピロロンとキッズケータイが鳴った。


「……え?」


 コートのポケットから引っぱりだすと、画面に表示されているのは、「ママ」って文字。時計表示は九時五十三分。


 うあ~っ! ものっすごい、ヤな予感……。



「も、もしもし……」


 そろそろとケータイに耳をつけると、ママのキンキン声がとびだしてきた。


「綾っ!?  あと七分で、塾がはじまるわよ? 今、どこでなにしてるのっ!? 」


 ぎゃっ! やっぱりっ!!


「さっさと、塾に行きなさいっ! サボリは許さないからねっ!! 」


「は、はい~」


 のろのろとあたしは電話を切った。


「……ヨウちゃん、鵤さん、ごめんなさい。あたし……塾に行ってきます……」



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