ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 真実を追いかけて

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「……え?」


 あたしも鵤さんの後ろから、管理棟の中をのぞきこんだ。

 パンフレットをわたしたり、案内をする窓口になってる管理棟。

 四畳半くらいの小さな部屋に、受話器や電気器具がとりつけられている。奥には、お茶を飲むためだけみたいな、簡易的なコンロと、小さな冷蔵庫。

 部屋でパイプイスをふたつくっつけて、ヨウちゃんが横たわっていた。肩にモッズコートをかけて、寝息を立ててる。


「よ、よ、よ、ヨウちゃんっ!?  どうして、ここにっ!? 」


 あたしは鵤さんのわきをくぐり抜けた。

 部屋に踏み込んで、肩をゆすぶると、ヨウちゃんがうすく目を開ける。


「え……綾……?」


「……ヨウちゃん……」


 なんだか鼻の奥がつんとした。

 眉をしかめて、ヨウちゃんが体を起こす。腕をついたり、背中をうかしただけで、苦しそうに歯を食いしばってる。

 そういえば、ヨウちゃん、数日前からずっとそうだ。あたしがちょっとさわっただけでも、すごく痛そうにしてる。


「ね、ヨウちゃん……もしかして、どこかケガしてる……?」


 だけど、あたしの問いを、後ろから入ってきた鵤さんの声がさえぎった。


「葉児君……。まさか、きみなのか……? 園内を荒らしたのは……」


「……え?」


 ヨウちゃんが、力の抜けた目で、鵤さんを見つめ返した。

 ひげにかこまれた鵤さんの口元。いつもやわらかい笑みをうかべてる口元が、けわしくゆがんでいる。


「ち、ちがうっ! オレじゃないっ!! 」


 ヨウちゃんの目がうるんだ。


「でも……それなら、なんできみは、こんなところにいるんだ。警備システムも壊されているようだ。そんなことができたから、きみはここに入り込めたんじゃないのかね?」


 おだやかなのに、すごみのある鵤さんの声。


「……ちがう……」


 ヨウちゃんは、ふらっと立ちあがった。足に重心をかけたとき、また口元が引きつる。


 痛そうっ!


「ヨウちゃんっ!! 」


 手をさしだしたあたしの肩に、両腕をかけて。

 だけどすぐに、ヨウちゃんはあたしから手をはなして、横をすり抜けた。


「ヤダ、待ってっ!」


 本能がさけんでる。


 このままほっといたら、ヨウちゃん、本当にどこかに消えちゃうっ!


 あたしは、ヨウちゃんのわきの下にかじりついた。


「行かないでっ!!  ヨウちゃんはそんなことしないっ! ヨウちゃんは園内を荒らしたりなんかする人じゃないっ! ヨウちゃんの味方はちゃんといるから、だいじょうぶっ!! 」


「……綾……」


 うつむいた琥珀色の前髪の下で、くちびるが震えだす。

 肩を落としてうなだれたヨウちゃんを、鵤さんが下からのぞきこんだ。


「なにがあったのか……話してくれるかい?」

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