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2 バレンタインデーは大好きなキミと
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しおりを挟む「……綾。おまえは出てくるな」
ヨウちゃんの手が、ぐいっと、あたしの肩を後ろに引きもどす。
「だ……だけど」
「帰るよ。帰りゃいいんだろ」
「ヨージ、行くぞ」
ヨウちゃんはもう、あたしたちを置いて、お父さんの後ろをついていく。
いつもみたいに、両手をコートのポケットにつっ込んで。だけど、肩を丸めて、うつむいたまま。
「……和泉。今の葉児、ヘンじゃなかった……?」
校門から出ていくふたりを見送りながら、誠がつぶやいた。
「……うん」
「なぁ。あの人って、本当に葉児の父親なわけ?」
ドキッとして、誠をあおぐ。クリクリした目は澄んでいて、まっすぐにお父さんの背中を見すえている。
「たしかに、ふたりとも顔はそっくりだけど。あの人、父親の目してなかったぞ」
誠って、やっぱり、カンがいい……。
「あ、あたしっ! ふたりを追いかけるっ!」
あたしはパッと走り出した。
「え? 和泉っ!? 」
「誠、バイバイ! またあした~」
校門からとびだして、道を左に走り出そうとすると、「綾! 待ちなさい」って、女の人の声で呼ばれた。
「ほ、ほぇ?」
すっごくきき覚えのある声。毎日、家のリビングできいているせいで、とっくの昔にききあきた声。
「ま、ママっ!? 」
ふり返って、ぎょっ!
校門の真ん前に、ママの真っ赤なスポーツカーがとまっていて、運転席の窓からママが顔を出している。
サングラスを頭に乗せて、髪の毛をくるくるのたてロールにして。赤いくちべにが、けばけばしい。
うわ~! これ、ぜったい、モデルの仕事帰りだ!
「綾? 家はそっちじゃないでしょ。学校帰りに、どこ行くつもりなのっ!? あんた、こないだの土曜日も塾サボったでしょっ! 高いお月謝払ってるのに、サボリなんて、もう二度と許さないからねっ!」
助手席のドアが開いて、あたし、ママの手で車の中につれ込まれる。
「ぎゃ~っ! 人さらい~っ!! 」
「なに言ってんのっ! さ、塾まで送っていくわよっ!! 誠君、またね~」
「え? あはは。さ、さようなら」
引きつり笑いで、手をふる誠をのこして。
車は、ブゥ~ンと走り出した。
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