箱庭のユウ

共鳴

ユウは文芸部に所属する高校一年生。
親友のアイという少女に強引に誘われ、入部したユウであったが、才能が昇華され半年でコンクールに入賞するほどの実力をつけていた。

しかし、その文学に対する天賦の吸収力を親友アイは、複雑な気持ちで眺めていた。
文芸部の部長もこなすアイであったが、入部してから未だコンクール入賞を果たすことはできず、後から入部したユウに軽々と先を越されてしまった。

アイは部活を続けるか人知れず悩むのであった。ユウが入部してから、アイは文学、小説のイロハのイから教えてきた、そのユウがたやすく自分を超えていくことは、まるで自分の中に眠る鉱脈を、先に発掘されてしまったかのような喪失感にさいなまれる日々を、いったいどうしたらいいのか、考えあぐねていた。

「アイちゃん！一緒に帰ろう。」
突如、文芸部の部室の片隅で、背中から声をかけられ、驚いて振り向くアイ。

そこには、親友ユウの姿があった。
西陽が差し込み、ユウを背後から照らしている。眩しさにアイは目を細めると、それを笑顔ととらえたユウは、嬉しそうにアイの手を取り校門へと先を促す。

親友じゃなければ、よかったのに。

アイは、バレないように小さく溜息をつく。退部届けは三週間も鞄の中で眠ったまま。