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第4章 リュート君誘拐事件!?

番外編 夢の2世帯住宅

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母様達からお仕置きと称した着せ替え人形が終わり、謹慎が終わった後。
気が付くと────

屋敷が増えていた。

「いつの間に……」

それは立派な屋敷であった。
とても、少し外に出られなかった間に建てられたものとは思えない。

「あぁ、リューは知らなかったっけ? お祖父様達も随分と張り切っていたからね、予定より随分早く完成したみたいだよ」

驚いてる俺の横で、兄様が何とも無しに言った。
兄様は前から知っていたようだ。
俺は毎日疲れていた事もあり、全く気が付かなかった。
魔法で音を遮断したりもしていたのかもしれない。

「……お祖父様は領地経営があるのでは?」

確かに前にそんな話を言っていたが、仕事があるから実現はしないと思っていた。

そう言えば、“リュートは私達と毎日会えたら嬉しいだろう?”と聞かれた事があった。
まさか、本当に建てるとは……。

「確か、リュートに空間魔法で領地と行き来をするとか言っていたけど」

「全くの初耳なのですが……」

初耳ではあるが、もう決定事項なのだろう。
屋敷が建っている以上、王様の許可も既に取っていそうだ。

「ははは、ほら彼処からここの別邸に繋がってるみたいだよ」

兄様の指差した方へ視線を向けると、俺達のいる別邸と新たに建てられた屋敷は繋がっていた。
何時でも自由に行き来が出来そうだ。

「──私は反対したのだがな」

「父様っ! おはようございます」

俺達が窓の外を眺めていると、不機嫌そうな父様が現れた。
不機嫌というより、嫌そうとも言えるかも知れない。

「おはよう、リュート……全く、あの人達はこんなものを勝手に作って」

「え? 勝手になのですか?」

てっきり父様が許可をだしたのだとばかり思っていた。

「あぁ、私はきっかりと断った。だが、私が仕事で居ないうちに着工して、帰ってきた頃には止められない状態でだった……どうやったのか、カミラも丸め込んでいたからな」

そう言った父様の顔は非常に悔しそうだった。
余程、家の2世帯住宅化が不満らしい。

父様……相当、一緒に暮らすの嫌がっているな。

俺達はひとしきり屋敷を眺めた後、朝食を取る為に部屋へと移動した。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「リュート、ついに工事が完了したのだ。もう見たか? これで、これからは毎日リュートに会えるぞ」

「うふふ、毎日リュート君に会えて私は嬉しいわ!」

父様に反して、お祖父様とお祖母様はいたく上機嫌だ。
そんな2人を見て、父様が眉間の皺を深くした。

「私は一切許可を出してませんがね」

「まぁ、ヴィンセント。そう親を邪険にするものではないわ。それにもう建ててしまったんですもの。既に終わった事を何時までも口にするのは紳士ではないわよ」

「そうだ、ヴィンセント。器が小さいぞ」

不満を口にした父様に、お祖父様とお祖母様が次々と責め立てる。
いつも毅然としている父様が、まるで子供のようで少し面白い。
母様も俺と同様に思っているのか、ニコニコと3人を見守っている。

「ふふ、皆仲良しね!」

隣に座っている母様が俺にこっそりと囁いた。

「父様に言ったら違うと言われそうですけど……僕は賑やかで好きですよ」

前世は騒がしいのは好きではなかったが、今ではとても落ち着く。

「うん、私も好き!」

母様と2人、顔を合わせて笑った。







「今日は私がリュートに我が領地を見せる予定だ」

「うふふ、何を言ってるのかしら? リュート君は私と演劇を観に行くのよ?」

「今日は私の仕事が休みで家族水入らずなのだから、2人にはご退場願いましょう。今日はリュートとレイアスとカミラと私の4人で湖に出掛けます」



「「「リュート(君)は誰を選ぶのだ(のかしら)?」」」



でも、大の大人がこんな下らない事で一々争うのは、心底面倒臭いと俺は思う。
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