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第1章 俺が乙ゲー転生ってマジですか?

07話 襲撃

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馬車での旅は順調だった。
食事や寝る時は少々不便だか、あと数日と思えば何とか耐えられる程のものだ。

「うーん、やっぱり床で寝ると首がいたくなるなぁ」

母様は首を痛めてしまったらしい。
俺は母様に抱き締められて眠っていたので、体の痛みは感じなかった。

「大丈夫ですか?」

俺は母様の首にマッサージする。
だが所詮幼児の握力、どこまで効果があるかは微妙だ。

「ん、大丈夫だよ。それよりも、リュー君の作るご飯が恋しぃ~」

この世界では余り料理が発達していないらしく、バラエティーが少ない。
母様はすっかり俺の作る料理の虜だ。
前世の独り暮らしの経験が、役立ってよかった。

「はい、次の町に着いたら沢山用意しますね」

「ケーキも忘れずにね!」

「ふふっ、勿論分かってますよ」

町に着いたらアップルパイでも焼くかな?

「そんなに小さいのに料理なんてしてるのかい? 凄い出来たこだねぇ」

俺達の話が聞こえたのか、急に馬車に乗り合わせていた老夫婦の奥さんに声をかけられた。

「はい、自慢の息子です。家の子は天使なんです!!」

母様が胸を張って、自信満々にこたえる。
その目から冗談ではなく、本気でそう思っている事が伺えた。

「なっ、母様恥ずかしいですっ!?」

自分で頬が真っ赤に染まるのが分かった。
母様は相変わらず親バカが入っている。

「照れちゃって、可愛いぃ~」

「仲のいい親子だねぇ」

「はいっ、それは勿論!」

そんな風に和気あいあいと、話しているときだった。

『キキィーッ』

大きな音と揺れと共に、馬車が急停車した。
何か異常事態が起きたようだ。

「リュー君……」

母様が俺を守るように抱き締める。

「なっ何が起きたんだい?!」

他の乗客たちがざわめきだした。

「ぐぁッ!?」

外で人の呻き声が聞こえたと思ったら、いきなりドアが開いた。

「おいっ、全員外に出ろ!」

開いたドアから、血が滴る剣を持った男が入ってきた。
あまりの事に乗客達は呆然として、男をただ見つめる。

「さっさとしろ! 殺すぞっ!!」

「ひぃっ!?」

剣を突きつけられた中年の男性が急いで外に出る。

「お前達もだ!」

その言葉を皮切りに、乗客客達が順に出ていく。

「……リュー君、私達も出よう。」

母様が俺の手を取って馬車からでると、外には馬車に付いていた2人の護衛の死体が転がされていた。
盗賊達は全部で20人近くいた。

「金は出す! だから命だけは助けてくれ!!」

商人の男が足下に膝まずいて許しを乞う。

「金ぇ? 何、当たり前の事言ってんだぁっ?」

「グェッ!?」

盗賊の男が商人の頭を踏み潰し、商人からは顔面を押し潰されたことにより苦悶の声が聞こえた。

「だれか助けて、死にたくない」

他の乗客達から口々にそんな言葉が漏れる。
皆、恐怖に震えていた。

「大丈夫。リュー君は私が絶対守るから」

母様が俺を抱き締め囁く。
……その手は震えていた。

「男は皆殺しだ! 女、子供は連れてって奴隷商に売り飛ばす!」

盗賊の男はそう宣言した。
その掛け声に従い、20人もの盗賊達が動き出す。
商隊には若い女が数人いて次々に盗賊達の馬車に連れていかれる。
そして、とうとう俺達の所にも盗賊の男が近づいてきた。

「ほぉ、こりゃエライ上玉な姉ちゃんじゃねぇか。すぐ売るなんて勿体ねぇ、俺達がたっぷり可愛いがってやるよっ!!」

そうして、下卑た笑い声とともに母様に触れようとした。
それを見た瞬間、勝手に体が動く。

「汚ない手で母様に触るなっ!」

男に飛びかかるが、腕を振り払われ簡単に倒れこむ。
その時、フードがするりと落ちた。

「リュー君っ!?」

母様が俺に向かって叫ぶ。

「何すんだっ!このっ糞餓鬼がっ!」

男が激怒し、叫ぶ。
俺は男を睨み付けた。

「ほぉ……フードなんて被って汚ねぇ餓鬼かと思ってたがとんだ上玉じゃねぇか! こりゃ、貴族の変態どもに高く売れるぞっ! 一生遊んで暮らせるっ!!」

俺の顔を見た瞬間、さっきまでの怒りから一転して興奮気味に叫んだ。
男が今度は俺に手を伸ばしてきた。

「ウォーターボールっ」

母様が叫んだ瞬間、男に水の球がぶつかって弾けた。

「このアマっ、何しやがる!?」

男は母様を蹴りあげた。

「うっ、リューく、ん」

母様が苦悶の声をあげながら、俺に手を伸ばす。
その瞬間、俺の中で何かが弾けた。
俺の周囲で炎が沸き上がる。

「なっなんだこれはっ!?」

薄汚い盗賊どもが途端に騒ぎ出す。
女を連れていっていた盗賊達もこの騒ぎに戻ってきた瞬間、逃げようとしたがすぐに炎に囲まれた。
炎は瞬く間に盗賊達の身体を包み、焼き始めた。
水属性の魔法を使えるものは、魔法で消そうとするが全く消える気配がない。
今まで試していた初級魔法と違って、確かな殺傷性を持つ炎が盗賊達に猛威をふるった。

「ギャアァッ!? アツイッ、助けてくれ!!」

「誰かたすけっ! 苦しいッ痛いッ!?」

「アツイアツイアツイアツイッー!!」

男達は焼かれながら、あまりの苦しみにのたうち回った。
血肉の焦げる嫌な臭いがする。

「死ね」

俺のその言葉とともに一気に燃え、空高く火柱を作った。




──炎が消えた頃、塵1つ残っていなかった。
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