光と闇

まこ

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第三章 行く末

始まりの予感

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 ティランが空に雷を出現させた時、多くのギンフォン国人がそれを目撃した。

 光の亀裂を目撃した者の中で、いち早く反応を見せたのは、カントリーに住む灰の子のシエルの父親カイム・ラリーが連れている黄金の竜だった。

 大きく反応を見せた竜は「カイム! 外に出るぞ!!」と、今までにないほど大きな声を出した。

「え?おい!」

 カイムは目を丸くして竜の後を追って家から出て行った。

 外に出た二人は、空を描く大きな亀裂を目の当たりにする事になる。

「カミナリ…。あの方向は…」

 光の亀裂は一直線にギンフォン国の南に向かって、降りて行く。

「雷の神竜様の力だ!」

 カミナリと呼ばれた竜は、空を見上げて叫んだ。

「ダメだ! 町一個吹き飛ぶぞ!」

 カミナリが大きな声で叫ぶと、空を裂く光の亀裂は、徐々に消えて行った。目を見開いたまま空を見上げる二人は立ち尽くしている。

「なんて…力だ」

 カイムは声を震わせて、空を見上げながら言った。

「雷の子だろうな! 雷の神竜様の力は炎と並ぶくらい威力が高いんだ! 子供が使ったらダメだ!」

 カミナリは興奮しているようで、声を張り上げて言っていた。

「おいカイム! 雷と炎の神竜様の力はダメだぞ! 訓練させないと! 大変だぞ!」

 竜は幼い声を響かせて、カイムに怒鳴り散らした。






───・・・






 ティランが雷の力をとっさに止めたまでは良かった。

「…………っ!」

 だが、抑制できなかった力はティランを放電させ、体を黄色い亀裂で覆った。ティランは自分の体を抱きしめるように腕を回し、しゃがみこむ。

 黄色い亀裂で埋め尽くされるティランを心配したシンは「ティラン!」と言って側に駆け寄ろうとした。

「近寄るなシン!」

 シンは、大きな少年に抱かれて連れ戻された。

 まるで体が放電しているようにバチバチと音を立てながら亀裂を発するティランは、自分の力を抑制しようと全力を尽くしていた。

「…………う!」

 少しずつ治って行くように、ティランを覆っていた亀裂は徐々になくなって行く。自分の体を小さくして、うずくまりながら、体から発する電気をゆっくりと抑制して行くティラン。

「…………」

 しばしの時間がたった頃、ティランを覆っていた電気は消え去った。

 息を切らして目を見開きながら下を向くティラン。

 大きな少年に抱かれていたシンは、彼の腕を振り解き「ティラン!」と言って走り出した。

 ティランの下へ駆け出したシンは、心配そうに彼の顔をのぞき込む。

「…………」

 彼は、息を切らしてうずくまったまま、動かない。

 とても大きな力を目の前にし、驚いたティランの体は徐々に震え出した。

 うつむいたまま震えるティランに、シンは「大丈夫? どうしよう。どうしよう」と困惑した声を響かせる。

 雷の力に驚いた子供たちは、ティランに駆け付ける事はなく、暫しの沈黙を保った。そして、ある変化が生まれていた事に気付いたのは、大きな少年だけだった。目を見開く子供たちは、ティランを見詰めながら固まっている中、大きな少年だけが、”別の物”へと視線を変えたのだった。

「…………」

 カタカタ…。

 カタカタ…。

 小さく鳴る音。

 小さく光り出すともしび

 微かな変化に、徐々に周りが気付き始めた。大きな少年だけではなく、さまざまな子供たちが、足元を見詰めていた。ガラクタは光り出す。電気を通したガラクタは、それぞれ光を放っていた。

 ティランの目の前に置かれたガラクタも、光が点滅している。

「ティラン!」

 先程から何度も名前を呼んでいるシンだったが、今は感動するように声を高くしていた。ようやく顔を上げたティランは、シンの顔を見ると、彼は笑っていた。

「光ったよ! 光った!」

 声を張り上げて叫んだシンの言葉に、目の前にあるガラクタを見たティランは、驚いたような顔をした。

 ガラクタは、ガラスで作られた丸い物体だった。丸いガラスの中にある物が、ほのかに光っていたのだ。

 ゴミ捨て場に大量に捨てられていたのは豆電球だった。恐らく他国から来たものだが、電気がないギンフォン国人は、不必要なものとして捨てて行ったのだ。いつからあったのか、誰が持って来たのかは定かではない。

 多くの豆電球が、ティランの放電がきっかけとなり、光を放っていた。

「何があった!?」

 大きな怒鳴り声のような怒声が辺りに響き渡る。

 声の主を視界に入れた子供たちは、駆け付けたおとなたちを、目を丸くして見ていた。おとなたちは食材を集めるために町を出ていたが、ギンフォン国を覆った大きな光を見た彼らは、慌てて帰って来たのだった。

「皆で…作ろうってなって…ティランの電気で…動かそうって…」

 一番近くにいた子供が、おとなたちのあまりのけんまくに、半泣き状態で答えた。子供が言った事を聞いたおとなたちは、辺りで点滅する豆電球を視界に入れる。

「なんて事だ」

 目を丸くして辺りを見渡す大人たちは、困惑したような表情を浮かべた。

 ギンフォン国の空を切り裂いた大きな光がきっかけとなり、奇跡の子や神々の子たちの行く末が、大きく変わって行く事を、今はまだ、誰も知るはずもなかった。



───・・・
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