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9話:二人の会話 その7

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岡本晃司「更に戦後の占領政策で根深いのが日本国民に罪の意識を徹底的に植え
     付けるWGIP[ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム]が
     あるね。
     これは分かりやすく言えば、戦争についての罪悪感を、日本人の心に
     植え付けるための宣伝計画やね。
     これは日本人の精神を粉々にし、二度とアメリカに戦いを挑んでこない
     ようにするためのものやね。
     東京裁判もその1つやけど、この施策は結果的に日本人の精神を見事に破壊
     したよね。
     GHQは思想や言論を管理し、出版物の検閲を行い、意に沿わぬ新聞や
     書物を発行した新聞社や出版社を厳しく処罰したよね。
     禁止項目は全部で30もあったとされてる。
     その禁止事項の第一はGHQ/SCAP[連合国軍最高司令官総司令部および
     最高司令官]に対する批判やんね。
     二番目は東京裁判に対する批判、三番目はGHQが日本国憲法を起草した
     ことに対する批判やね」
 
園田一花「アメリカ、イギリス、ソ連、フランス、中華民国、その他の連合国に
     対する批判も禁じられましたよね」

晃司「さらに何故か朝鮮人に対する批判も禁止事項に含まれてるよね。
   占領軍兵士による犯罪の報道も禁じられたんよね。
   またナショナリズムや大東亜共栄圏を評価すること、日本の戦争や戦犯を
   擁護することも禁じられてたね。
   新聞や雑誌にこうした記事が載ったら、全面的に書き換えを命じられたん
   やね」

    GHQの検閲は個人の手紙や電話にまで及んだ。

一花「進駐軍の残虐行為を手紙に書いたことで、逮捕された者もいるくらいです。
   スターリン時代のソ連ほどではなかったですけど、戦後の日本に言論の
   自由は全くありませんでしたね。
   これらの検閲を、日本語が堪能でないGHQのメンバーだけで行えたはずが
   ありません。
   多くの日本人協力者がいたのは公然の秘密だったのですよね。
   一説には4000人の日本人がかかわったと言われてますね。
   さらにGHQは戦前に出版されていた書物を7000点以上も焚書(ふんしょ)
   しています」

    焚書とは、支配者や政府が自分たちの意に沿わぬ、あるいは都合の悪い
    書物を焼却することで、これは最悪の文化破壊の一つである。

晃司「秦の始皇帝とナチスが行った焚書が知られているけど、GHQの焚書も悪質さに
   おいてそれに勝るとも劣らないものがあったね。
   驚くべきは、これに抵抗する者には、警察力の行使が認められていたし、
   違反者には10年以下の懲役もしくは罰金という重罪がかせられていたことや。
   もちろん、この焚書にも多くの日本人協力者がいたんやね。
   特に大きく関与したのは、日本政府から協力要請を受けた東京大学の文学部
   やと言われてる。
   同大学の文学部内には戦犯調査のための委員会もあった。
   この問題をその後マスメディアが全く取り上げようとしないのは不可解やね。
   検閲や焚書を含む、これらの言論弾圧はポツダム宣言に違反する行為やった。
   ポツダム宣言の確か第10項には言論、宗教および、思想の自由ならびに
   基本的人権は確立されるきである記されてると思う。
   つまりGHQは明白なポツダム宣言違反を犯しているにもかかわらず、当時の
   日本人は一言の抵抗すらできんかった。
   ちなみに大東亜戦争と言う言葉を使えば処罰される。
   GHQは太平洋戦争という名称を使う事を命じ、出版物に大東亜戦争という
   言葉を使えば処罰された。
   この検閲は7年間続いたけど、この時の恐怖が国民の心の中に深く残った
   ためか、75年後の俺らの元いた日本でも、マスメディアは決して大東亜戦争
   とは表記せずに、国民の多くにも大東亜戦争というのを躊躇(ちゅうちょ)
   する空気があるね。
   いかにGHQの検閲が恐ろしかったかが分かるね」

一花「そうですよね。あと戦後の占領政策で印象的なのが教職追放ですね。
   GHQのおこなった思想弾圧で、後の日本に最も影響を与えたのはこの
   教職追放です。
   GHQは占領直後から、帝国大学で指導的立場にあった多くの愛国者や保守的な
   思想の持ち主である教授たち、あるいはGHQの政策に批判的な教授を次々に
   追放しましたね。
   ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム[WGIP]を日本人に完全に
   植え付けるためには、教育界を抑えなければならないと考えたからですね。
   代わってGHQが指名した人物を帝国大学にいれましたが、その多くは戦前に
   共産党員であったり、無政府主義的な論文を書いたりして大学から処分された
   人たちでした。
   戦前、森戸事件これは東京大学教授の森戸辰男が無政府主義の宣伝をした
   事件ですが。これに関係して東京大学を辞めさせられた
   大内兵衛(おおうちひょうえ)、戦前、無政府主義的な講演をして京都大学
   をやめさせられた滝川幸辰(たきがわゆきとき)など、多くの者がGHQの
   後ろ盾を得てWGIPの推進者となり、最高学府を含む大学を支配していく
   ことになりました。
   一方、追放を免れた者も、GHQの政策に批判的なことを口にしなくなった
   ばかりか、帝国大学においては、共産主義に阿(おもね)る教授や社会主義者
   に転向する者、変節する学者が続出しました。
   特にひどかったのは東京帝国大学で、昭和21年(1946年)、憲法学者の
   宮沢俊義(みやざわとしよし)は8月革命説を唱えて、日本国憲法の正当性を
   論じたのは有名ですね。
   8月革命説とはポツダム宣言の受諾によって、主権原理が天皇主権から国民主権
   へと革命的に変動したもので、日本国憲法はGHQによって押し付けられたもの
   ではなく、日本国民が制定した憲法であるという説ですね」

晃司「俺らのいた日本でも、この説は東大の憲法学の教授たちによって引き
   継がれて、その教え子たちによって全国の大学の法学部に広く行き渡り、
   司法試験などの受験界では宮沢説は通説となっていたね」

一花「はい。また国際法学者として東京大学に君臨した
   横田喜三郎(よこたきさぶろう)は、東京裁判の正当性を肯定していますね。
   もちろん彼の説も、その後、弟子たちによって東京大学および全国の大学に
   脈々と継承されています。
   余談ですが、横田喜三郎はGHQによる占領中に天皇を否定する内容の本を
   書いて出版しました。
   しかし後年、最高裁長官に任命され、勲一等旭日大綬章が貰えそうに
   なった時、門下生に命じて神田の古書店で自著を買い集めさせ、証拠隠滅の
   ために個人焚書をしました」

晃司「なんとも恥知らずな話やけど、見方を変えたら、己の信念で書いた学説では
   なかったという証拠やね」

一花「そうですね。憲法学者の宮沢俊義も、最初、日本国憲法の制定は日本国民が
   自発的自主的に行ったものではないと主張してましたが、ある日突然、
   正反対の意見を言い出した学者ですね。
   その変わり身の早さから、恐らくGHQの教職追放を目の当たりにして、慌てて
   転向したものと思われます。
   悲しいのは、その後の、日本の憲法学会をリードする東京大学の法学部の教授
   たちが、その学説を半世紀以上にわたって私たちが元いた日本で継承し続けて
   いるということですね。
   そして東京大学法学部からは、戦後も数多くの官僚が輩出しているという
   ことです。
   自虐史観に染まった教授たちから日本国憲法は日本人が自主的に作った、
   東京裁判は正しいという教育を受けた人たちが、文部科学省や外務省の官僚に
   なるということのほうがむしろ、恐ろしい事ですね。
   教職追放は大学だけでなく、高校、中学、小学校でも行われました。
   最終的に自主的な退職も含めて約12万人もの教職員が教職現場から
   去りました。
   その多くが愛国心を隠さなかったり、保守的な考えを持っていたりした者で、
   特に戦前の師範学校出身者が多かったと言われています。
   その結果、教育界は社会主義者が支配するようになり、昭和22年[1947年]に
   生まれた日本教職員組合通称日教組は、完全に左翼系運動組織となりました。
   後に日教組の書記長となり、30年にわたってトップの座にあった
   槙枝元文(まきえだもとふみ)は、当時、国交がなかった北朝鮮を何度も
   訪問し、金日成(キムイルソン)から勲章まで授けられています。
   こうして戦後の日本の教育界は左翼系の人々に乗っ取られた形となりました」

    晃司と一花はまだ話が出来そうでいたのである。

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