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銀鳴鳥の囀る朝に。 短編
短編 幸せの鐘が鳴る朝に。
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※平行世界の金鳴鳥の二人(旅立った二人)のその後の話です。
ぐががっと幸せそうにいびきをかいて眠っているのは、金髪の美丈夫。
昨夜も冒険者としての依頼が終わった後に酒を飲み、恋人をベッドの上に押し倒して濃密な時間を過ごした。
宿屋ではいつも広くて丈夫なベッドのある部屋を取っている。
そのため、半裸なままぬくぬくとシーツに転がっていた。
「グラディウス、大変だ! 子どもが出来た!」
その時、慌てた様子で扉を叩いて入ってきたのは、すらりとした細身の青年だった。
「んがっ……子ど……も……子ども!?」
その様子に飛び起きたグラディウスは、耳にした言葉に混乱する。
「あぁ、今医者で見てもらったが、間違いないと……」
グラディウスはがばりとベッドから起き上がると、「でかした!」とアイルに優しく抱き付いた。
「えっあの、グラディウス?」
「毎晩腹が膨れる程種付けしたからか? あぁ畜生、なんでもいい! なんてこった! 子どもができるなんて!」
「いや、そんな赤裸々な事情は知らないけれど、しばらくは安静にした方がいいと……」
「わかってる、わかってるよ! あぁ、こんな嬉しい奇跡が起きるなんて……大切に育てるからな……」
「君も喜んでくれているのは嬉しいが……」
「名前はどうする、性別は? ははっ何でもいい、生れてくれるなら……」
グラディウスはアイルを抱き上げると、その薄い腹にそっとやさしくキスを落とした。
「あの……グラディウス、何か、勘違いしていないか?」
「あ? 子ども、だろ? 俺たちの」
「……大丈夫か? 男が妊娠するはずがないだろう?」
「……へ?」
喜びのあまりに瞳が潤んでいた男はパチパチと瞬きをして正気に戻る。
「僕と君の愛馬、セレンとダークの子だ」
寝ぼけていたグラディウスは、一瞬前までの自分の浮かれた様子に赤面し、おああっと頭を抱えた。
「馬ならそうと先に言ってくれ!!」
宿屋の一階の酒場で遅い朝食を食べながら、グラディウスは赤面したまま詳細を聞く。
「いや、僕もちょっと君の浮かれ具合に驚いて……」
「うぐっ」
医者といってもこの街にいる獣医の事で、アイルは普段と様子の違う愛馬の姿に心配になり、朝から見てもらっていた。
セレンと名付けられたのはアイルの牝馬で、国を出てからも主を支える賢い馬だ。
ダークという名前はグラディウスが付けた黒い牡馬だ。安直すぎてどうかとアイルは最初思ったが、主人も馬もそれで良いらしく、荒々しくも良い関係を築いている。
「セレンは最初見向きもしていなかったと思うのだけれど、いつの間にか仲良くなっていたみたいだ」
「あぁ……ダークのやつも発情の度に迫っていたが、毎回足蹴にされていたからなぁ。……まさかあいつらがなぁ」
「セレンよりもダークの方が大分体格が良いから少し心配したけれど、仲良くなって番になったみたいだね」
しみじみとアイルが言うと、グラディウスがもぞりとする。
「体格がいい方が押さえつけてってのは、俺たちもだけど」
「グラディウス……昨夜あれだけしたのに……君はまだ煩悩が……」
食事中だぞとアイルは赤くなった首元を隠しながら苦言を呈す。
「まぁ、しばらくこの街に滞在するつもりだったから良いが、どうする、馬を預けるか?」
「この街はこの大陸の貿易の中心地だし、軍馬も育てているからか、環境も整っている。預けてもいいけれど……一つ考えている事があって」
「考えって?」
「君も隣国での剣術大会で優勝したり、二人で達成した依頼も多く功績も増えた。今では直接ギルドから依頼が来るほどまでになっている。大分、貯金が出来たと思うんだ。……どうだろう。ここを拠点として活動するために、家を買うのも良いんじゃないかなって」
「家……」
グラディウスはパンの欠片を手に持ったまま、呟く。
「裸……エプロン……」
「どうした? グラディウス」
「ご飯にする……風呂にする……それとも……まぁお前一択だが……」
「大丈夫か? あの、おーい、聞こえているか?」
「悪い。ちょっと噛み締めてた」
「ああ、うん……えっと、どうだろうか」
「いいね、また俺たちの夢が叶うな」
グラディウスは嬉しそうに破顔した。
その笑顔にアイルも安心した様に、微笑する。
「あぁ、せっかくだから、良い家を選ぼう」
朝食を終えるとシリルに餌をやり、条件などを二人で話し合った。
それから午後には馬の世話を宿屋の主人に頼んで、さっそく物件の紹介業者の元へ向かった。
グラディウスとシリルを肩に乗せたアイルは、紹介業者に連れられて候補の物件を見回る事となった。
「こちらは都心からも近く物件は少々古いですが見栄えも悪く無く……」
「寝室が狭い、却下」
「グラディウス、少し言い方が……見たところ厩舎が少し小さいかな。軍馬が二頭いるから少し広い方がいいのだけれど……」
「あとは浴槽は広い方が良い」
「はぁ、一級冒険者の要望は新婚夫婦の住居みたいですね……」
「あの……その、ここを拠点として依頼を受けるので、その……戻ってきたときは落ち着ける場所が良いというか……」
「わかっています、でしたら値は張りますが、もう二軒ほどご要望に添えた物件がありますね」
アイルは冒険者として必要な条件を示し、グラディウスは二人の住居として必要な条件を示している。
二人の条件が上手く合う物件は数が少ない様子だった。
「ピィィ! シリル、ココイヤ! シリル……キレイガイイ!」
旅を重ねるごとに良くしゃべるようになったシリルは、アイルの肩に乗り、ピィっと囀る。
「鳥に決定権はねぇよ」
「クズディーウス、キライ!……アッチイケ!」
「てめ、わざとだろ! グ・ラ・ディ・ウ・ス! クズなんて一欠けらも入ってねーよ!」
「クズッディーウス! シリル、イジメル。アイル、コワイコワイ」
ぴるるっと可愛く作った声色で主の髪に顔を埋めるシリルに、アイルは破顔した。
「ははっよしよし。君も家族の一員だからね。気に入る物件を探そう?」
「お前、年々この鳥に甘くねぇか?」
「えぇ? そうかな。普通だと思うよ?」
「シリル、アイルノコイビト~……クズディーウス、シッシ」
「喧嘩売ってんのかこら!」
「あははっ」
戦えば一騎当千、魔導剣士の美丈夫と銀鳴鳥を肩に乗せる凄腕の剣士の二人組の冒険者は、その実力から名を馳せていた。
戦地にも魔獣にも引かぬ良く訓練された馬で駆ける二人は国を出てからずっと共にあった。
凍える砂漠の星明かりの下で夜を明かし、灼熱の火山の岩盤を走って病の特効薬となる花を運んだ。
数多の冒険に、幾多の危機に、けれども隣には背を預けられる人がいるのだと生きてきた。
アイルは微笑む。
その奇跡が、きっとこれからも続いていくという事に。
「あとはやっぱり書斎が欲しいなぁ」
「うげ、書斎? 本でも読むのか?」
「買った本を納めておきたいと言うのもそうだけど、君と歩んだたくさんの道のりを書き記すのも面白いかなって」
「へぇ。確かにお前休日にはよく読んでいるもんな。毎回処分するのも大変そうだし」
「捨ててないよ」
「あれ? そうなのか?」
「うん、各国で買って読んだ本はこの街の貸倉庫に預けてあるから」
「へぇ~。ま、いいんじゃねぇの? 二人の家だしな」
その言葉に嬉しさが増す。
「そうだね」
「アイルト、シリルノイエ~」
「鳥に住居権はねぇよ」
「あははっ」
次に紹介されたのは都心からは少し外れるが、緑も多く広さも丁度良い。
「どうでしょう、この物件などもおすすめです」
「うーん、良いけどちょっと値が張るんだよなぁ……」
財布の紐をグラディウスに持たせると大変な事になる事を知っているので、二人の共有財産はアイルが管理していた。
「いいんじゃねーの? 俺は気に入ったぜ」
丁寧に内装を調べていたら、丁度時刻は夕方になっていた。
その時、近くの教会で綺麗な鐘が鳴り響く。
荘厳ながらも優しく、そっと人の心に入るような……そんな美しい音色だった。
「あぁ、この近くの教会の鐘の音ですね。朝と夕に鳴らされるのです」
「ピィィ!!」
シリルがその鐘の音に追走するように歌い出した。
まるで追走曲の様に、伸びやかに歌声を響かせる。
「シリルも気に入ったようだね。ここにしようか」
「ピピィィ!」
「うわ、小遣い上げてくれない守銭奴のアイルが即決した」
「人聞きの悪い。君に渡すと酒代に変わるから、紐を締めているだけだよ」
「この鐘は、王が愛しい人の為に建てたと言われておりましてね、その物語の由来から『幸せの鐘』と呼ばれているのです。お気に召してよかった」
「はい、すぐに良い物件を教えてくれて助かりました」
アイルは男と契約を進めていく。
グラディウスはシリルを預かると、屋根に上がる梯子を見つけ、颯爽と上がっていく。
「お、見晴らしは最高だな」
「ピィィ!」
夕方に照らされて、街が黄昏に染まる。
その黄金色の光を浴びて、シリルの羽が金色に輝いた。
銀鳴鳥が金色に染まる事はもう無い。
人の願いを叶える鳥の力を必要としなくても、彼の願いは叶えられるからだ。
ただ共にあればいい。
彼の愛しい人と共に。
「幸せの鐘が鳴る朝に、あいつにおはようのキスができるなんて最高じゃねぇの?」
「ピィ!」
グラディウスは、アイルが呼びに来るまでシリルと共に黄金色に染まる街を見つめていた。
【あとがき】
お読みいただきありがとうございました!
これにて銀鳴鳥の囀る朝に。完結でございます。
ご声援のほど、ありがとうございました。
それではまたどこかの物語でお会いできることを楽しみにしています。
11/26 弥生
ぐががっと幸せそうにいびきをかいて眠っているのは、金髪の美丈夫。
昨夜も冒険者としての依頼が終わった後に酒を飲み、恋人をベッドの上に押し倒して濃密な時間を過ごした。
宿屋ではいつも広くて丈夫なベッドのある部屋を取っている。
そのため、半裸なままぬくぬくとシーツに転がっていた。
「グラディウス、大変だ! 子どもが出来た!」
その時、慌てた様子で扉を叩いて入ってきたのは、すらりとした細身の青年だった。
「んがっ……子ど……も……子ども!?」
その様子に飛び起きたグラディウスは、耳にした言葉に混乱する。
「あぁ、今医者で見てもらったが、間違いないと……」
グラディウスはがばりとベッドから起き上がると、「でかした!」とアイルに優しく抱き付いた。
「えっあの、グラディウス?」
「毎晩腹が膨れる程種付けしたからか? あぁ畜生、なんでもいい! なんてこった! 子どもができるなんて!」
「いや、そんな赤裸々な事情は知らないけれど、しばらくは安静にした方がいいと……」
「わかってる、わかってるよ! あぁ、こんな嬉しい奇跡が起きるなんて……大切に育てるからな……」
「君も喜んでくれているのは嬉しいが……」
「名前はどうする、性別は? ははっ何でもいい、生れてくれるなら……」
グラディウスはアイルを抱き上げると、その薄い腹にそっとやさしくキスを落とした。
「あの……グラディウス、何か、勘違いしていないか?」
「あ? 子ども、だろ? 俺たちの」
「……大丈夫か? 男が妊娠するはずがないだろう?」
「……へ?」
喜びのあまりに瞳が潤んでいた男はパチパチと瞬きをして正気に戻る。
「僕と君の愛馬、セレンとダークの子だ」
寝ぼけていたグラディウスは、一瞬前までの自分の浮かれた様子に赤面し、おああっと頭を抱えた。
「馬ならそうと先に言ってくれ!!」
宿屋の一階の酒場で遅い朝食を食べながら、グラディウスは赤面したまま詳細を聞く。
「いや、僕もちょっと君の浮かれ具合に驚いて……」
「うぐっ」
医者といってもこの街にいる獣医の事で、アイルは普段と様子の違う愛馬の姿に心配になり、朝から見てもらっていた。
セレンと名付けられたのはアイルの牝馬で、国を出てからも主を支える賢い馬だ。
ダークという名前はグラディウスが付けた黒い牡馬だ。安直すぎてどうかとアイルは最初思ったが、主人も馬もそれで良いらしく、荒々しくも良い関係を築いている。
「セレンは最初見向きもしていなかったと思うのだけれど、いつの間にか仲良くなっていたみたいだ」
「あぁ……ダークのやつも発情の度に迫っていたが、毎回足蹴にされていたからなぁ。……まさかあいつらがなぁ」
「セレンよりもダークの方が大分体格が良いから少し心配したけれど、仲良くなって番になったみたいだね」
しみじみとアイルが言うと、グラディウスがもぞりとする。
「体格がいい方が押さえつけてってのは、俺たちもだけど」
「グラディウス……昨夜あれだけしたのに……君はまだ煩悩が……」
食事中だぞとアイルは赤くなった首元を隠しながら苦言を呈す。
「まぁ、しばらくこの街に滞在するつもりだったから良いが、どうする、馬を預けるか?」
「この街はこの大陸の貿易の中心地だし、軍馬も育てているからか、環境も整っている。預けてもいいけれど……一つ考えている事があって」
「考えって?」
「君も隣国での剣術大会で優勝したり、二人で達成した依頼も多く功績も増えた。今では直接ギルドから依頼が来るほどまでになっている。大分、貯金が出来たと思うんだ。……どうだろう。ここを拠点として活動するために、家を買うのも良いんじゃないかなって」
「家……」
グラディウスはパンの欠片を手に持ったまま、呟く。
「裸……エプロン……」
「どうした? グラディウス」
「ご飯にする……風呂にする……それとも……まぁお前一択だが……」
「大丈夫か? あの、おーい、聞こえているか?」
「悪い。ちょっと噛み締めてた」
「ああ、うん……えっと、どうだろうか」
「いいね、また俺たちの夢が叶うな」
グラディウスは嬉しそうに破顔した。
その笑顔にアイルも安心した様に、微笑する。
「あぁ、せっかくだから、良い家を選ぼう」
朝食を終えるとシリルに餌をやり、条件などを二人で話し合った。
それから午後には馬の世話を宿屋の主人に頼んで、さっそく物件の紹介業者の元へ向かった。
グラディウスとシリルを肩に乗せたアイルは、紹介業者に連れられて候補の物件を見回る事となった。
「こちらは都心からも近く物件は少々古いですが見栄えも悪く無く……」
「寝室が狭い、却下」
「グラディウス、少し言い方が……見たところ厩舎が少し小さいかな。軍馬が二頭いるから少し広い方がいいのだけれど……」
「あとは浴槽は広い方が良い」
「はぁ、一級冒険者の要望は新婚夫婦の住居みたいですね……」
「あの……その、ここを拠点として依頼を受けるので、その……戻ってきたときは落ち着ける場所が良いというか……」
「わかっています、でしたら値は張りますが、もう二軒ほどご要望に添えた物件がありますね」
アイルは冒険者として必要な条件を示し、グラディウスは二人の住居として必要な条件を示している。
二人の条件が上手く合う物件は数が少ない様子だった。
「ピィィ! シリル、ココイヤ! シリル……キレイガイイ!」
旅を重ねるごとに良くしゃべるようになったシリルは、アイルの肩に乗り、ピィっと囀る。
「鳥に決定権はねぇよ」
「クズディーウス、キライ!……アッチイケ!」
「てめ、わざとだろ! グ・ラ・ディ・ウ・ス! クズなんて一欠けらも入ってねーよ!」
「クズッディーウス! シリル、イジメル。アイル、コワイコワイ」
ぴるるっと可愛く作った声色で主の髪に顔を埋めるシリルに、アイルは破顔した。
「ははっよしよし。君も家族の一員だからね。気に入る物件を探そう?」
「お前、年々この鳥に甘くねぇか?」
「えぇ? そうかな。普通だと思うよ?」
「シリル、アイルノコイビト~……クズディーウス、シッシ」
「喧嘩売ってんのかこら!」
「あははっ」
戦えば一騎当千、魔導剣士の美丈夫と銀鳴鳥を肩に乗せる凄腕の剣士の二人組の冒険者は、その実力から名を馳せていた。
戦地にも魔獣にも引かぬ良く訓練された馬で駆ける二人は国を出てからずっと共にあった。
凍える砂漠の星明かりの下で夜を明かし、灼熱の火山の岩盤を走って病の特効薬となる花を運んだ。
数多の冒険に、幾多の危機に、けれども隣には背を預けられる人がいるのだと生きてきた。
アイルは微笑む。
その奇跡が、きっとこれからも続いていくという事に。
「あとはやっぱり書斎が欲しいなぁ」
「うげ、書斎? 本でも読むのか?」
「買った本を納めておきたいと言うのもそうだけど、君と歩んだたくさんの道のりを書き記すのも面白いかなって」
「へぇ。確かにお前休日にはよく読んでいるもんな。毎回処分するのも大変そうだし」
「捨ててないよ」
「あれ? そうなのか?」
「うん、各国で買って読んだ本はこの街の貸倉庫に預けてあるから」
「へぇ~。ま、いいんじゃねぇの? 二人の家だしな」
その言葉に嬉しさが増す。
「そうだね」
「アイルト、シリルノイエ~」
「鳥に住居権はねぇよ」
「あははっ」
次に紹介されたのは都心からは少し外れるが、緑も多く広さも丁度良い。
「どうでしょう、この物件などもおすすめです」
「うーん、良いけどちょっと値が張るんだよなぁ……」
財布の紐をグラディウスに持たせると大変な事になる事を知っているので、二人の共有財産はアイルが管理していた。
「いいんじゃねーの? 俺は気に入ったぜ」
丁寧に内装を調べていたら、丁度時刻は夕方になっていた。
その時、近くの教会で綺麗な鐘が鳴り響く。
荘厳ながらも優しく、そっと人の心に入るような……そんな美しい音色だった。
「あぁ、この近くの教会の鐘の音ですね。朝と夕に鳴らされるのです」
「ピィィ!!」
シリルがその鐘の音に追走するように歌い出した。
まるで追走曲の様に、伸びやかに歌声を響かせる。
「シリルも気に入ったようだね。ここにしようか」
「ピピィィ!」
「うわ、小遣い上げてくれない守銭奴のアイルが即決した」
「人聞きの悪い。君に渡すと酒代に変わるから、紐を締めているだけだよ」
「この鐘は、王が愛しい人の為に建てたと言われておりましてね、その物語の由来から『幸せの鐘』と呼ばれているのです。お気に召してよかった」
「はい、すぐに良い物件を教えてくれて助かりました」
アイルは男と契約を進めていく。
グラディウスはシリルを預かると、屋根に上がる梯子を見つけ、颯爽と上がっていく。
「お、見晴らしは最高だな」
「ピィィ!」
夕方に照らされて、街が黄昏に染まる。
その黄金色の光を浴びて、シリルの羽が金色に輝いた。
銀鳴鳥が金色に染まる事はもう無い。
人の願いを叶える鳥の力を必要としなくても、彼の願いは叶えられるからだ。
ただ共にあればいい。
彼の愛しい人と共に。
「幸せの鐘が鳴る朝に、あいつにおはようのキスができるなんて最高じゃねぇの?」
「ピィ!」
グラディウスは、アイルが呼びに来るまでシリルと共に黄金色に染まる街を見つめていた。
【あとがき】
お読みいただきありがとうございました!
これにて銀鳴鳥の囀る朝に。完結でございます。
ご声援のほど、ありがとうございました。
それではまたどこかの物語でお会いできることを楽しみにしています。
11/26 弥生
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本当に読んでくださり、ありがとうございました✨️
めちゃくちゃ感動しました。一気に読んでしまって今後悔してます。゚(゚´ω`゚)゚。
素敵なお話をありがとうございます。これからも応援しています!
るか様
一気読みありがとうございます!
とても嬉しいです。
感動していただいたという感想で本当に今心がほわほわとしています。
これからも頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございます!
奨励賞おめでとうございます!!!
我がことのように嬉しいです
とらや様
ありがとうございます!
お祝いしていただき、本当に嬉しいです。
これからも頑張っていきます!