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恋の花を探す君に。
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#恋が叶う花BL
高校生活最後の文化祭、後夜祭ではみんな音楽に合わせて思い思いに過ごしている。
告白なんかもして、最後の想い出作りをしている子もいるみたいだ。
俺は中庭の人混みから抜け出して、そっと彼を探しに行く。後夜祭の始まりに、ちゃっかりくっついた会長と副会長のペアが文化祭実行委員の紹介をしていたけれど、彼の姿はなかったから。
……きっと彼ならここだろうなって。
誰もいない放送室。
一人、音楽を流していた彼によっと声をかけた。
彼は放送室の窓から中庭を見る。
思った通り、自分から志願したのだろう。
後夜祭に混ざることができない裏方に徹しているのが彼らしい。
こんな人もいない場所に。
せっかくだから中庭に行けばいいのにって言われたけれど、俺が一緒にいたいのはお前だからここが特等席なんだよなぁとは思ってはぐらかしておいた。
そのうちぽつりと彼が話しだした。
「3年に一度だけ、恋が叶う花が咲くらしい。良いな。そんな花があったら。……俺の恋も実るのかな」
その言葉に衝撃を受ける。
いやいやいや、いるの。好きなやつ。
恋しちゃってるの。そんな切なそうな表情で。
俺、お前の隣にずっといたのに、全部気づかなかったのに。
文化祭実行委員も大変なのに押し付けられて、今日も迷子を本部に送り届けたり無事に終わるようにと学校中走り回って、しょうがないよなって割食っているのに笑うお前が……普段は言わないような願い。
はっと自分の言葉に我に返ったように誤魔化すけれど、俺は、そんなお人好しな彼が大好きで。
「そんな花なんてあるのか……探そうかな。俺も好きな人いるし」
そんな花があるのなら、お前も幸せになれるかな、なんて。
一人占めして俺の恋を叶えてもらうって誘惑にもほんのすこし……ちょっぴり本気で悩んだけれど、やっぱりここは……うんと気合いをいれる。
俺の好きな人の恋を叶えてもらいたい。
だってさ、こんなにも良い奴なんだから。俺は誰よりも彼に幸せになってもらいたい。
そんな気持ちで手当たり次第に探したけれど、花は全然見つからない。
噂は本当らしく、どこかの部活の先輩は叶ったらしいなんて話だけは伝わっている。だけど目撃情報は曖昧だ。
用務員のおっちゃんや長くいる先生に聞いて、どうにか時期外れの花、とだけは聞き出せた。
ふっ、男子高校生に花の開花情報なんてわかるわけがない。
変わり種の花を見つける度に図書館で借りてきた手帳サイズの花の図鑑で確認する。
ふと、見かけない花。この時期には見ない……冬のページにあったような……白い小さな花を見つける。
「あった!!」
興奮して彼を呼ぶ。
あった、あったんだよ!
諦めているのか、少し乗り気ではなさそうな彼を呼び寄せる。
「時期外れに咲くこの花、きっとこれだ!」
あぁ、良かった。
これで、彼の願いが叶う。それを思うだけで笑みが溢れた。
「はいこれ!」
花を差し出したら彼が驚いた。
いや、当然じゃん?
「え? だってお前が欲しそうだったから」
だから見つかって本当に良かったよ。
「確かに俺も好きな奴がいるからさ。一人占めしたいなって一瞬思ったけど……。でもいつも人にすべて譲ってさ、自分は最後でいいって毎回我慢しているお前が、あれだけ切なそうに欲しがったんだ。お前が何か願うのも本当に珍しいし。だから、お前の恋が実れば良いなって」
だから、はい。
彼は震える手で、花をそっと受けとった。
あぁ、良かった。
俺的には彼の恋が叶う=失恋で全然良くはないんだけど。
でも、いつも人を優先する彼の恋が叶うなら。その方が何百倍もいいや。
「願い、叶うといいな」
「……うん」
「俺お前が好きだから、幸せになってほしいし」
「……うん」
「失恋しても親友ではいさせて欲しいな!」
「……う……うん!?」
へへへ、言っちゃった。このぐらいは許して欲しい。恋人の座は貰えなくても、一生の友達の座は欲しいなって!
顔を上げた彼が、とても驚いた顔をして、それから見て分かるほどに、ぶわりと首から耳まで真っ赤に染め上げた。
なんだなんだ可愛いの氾濫か!? と思っていると、いきなりぽろぽろ泣きながら、恋が叶ったよとすがり付いてきた。
えっ効果絶大過ぎでは!? って思ったけれど、えっと、えっと、それって、ええ!? もしかして、俺??
3年に1度、恋が叶う花が咲く。
一度に二人の恋を叶えるなんて、本当に効果は絶大だ。
俺は泣いてる彼をぎゅむりと抱き締めると、探して良かったー! なんて思ってしまった。
高校生活最後の文化祭、後夜祭ではみんな音楽に合わせて思い思いに過ごしている。
告白なんかもして、最後の想い出作りをしている子もいるみたいだ。
俺は中庭の人混みから抜け出して、そっと彼を探しに行く。後夜祭の始まりに、ちゃっかりくっついた会長と副会長のペアが文化祭実行委員の紹介をしていたけれど、彼の姿はなかったから。
……きっと彼ならここだろうなって。
誰もいない放送室。
一人、音楽を流していた彼によっと声をかけた。
彼は放送室の窓から中庭を見る。
思った通り、自分から志願したのだろう。
後夜祭に混ざることができない裏方に徹しているのが彼らしい。
こんな人もいない場所に。
せっかくだから中庭に行けばいいのにって言われたけれど、俺が一緒にいたいのはお前だからここが特等席なんだよなぁとは思ってはぐらかしておいた。
そのうちぽつりと彼が話しだした。
「3年に一度だけ、恋が叶う花が咲くらしい。良いな。そんな花があったら。……俺の恋も実るのかな」
その言葉に衝撃を受ける。
いやいやいや、いるの。好きなやつ。
恋しちゃってるの。そんな切なそうな表情で。
俺、お前の隣にずっといたのに、全部気づかなかったのに。
文化祭実行委員も大変なのに押し付けられて、今日も迷子を本部に送り届けたり無事に終わるようにと学校中走り回って、しょうがないよなって割食っているのに笑うお前が……普段は言わないような願い。
はっと自分の言葉に我に返ったように誤魔化すけれど、俺は、そんなお人好しな彼が大好きで。
「そんな花なんてあるのか……探そうかな。俺も好きな人いるし」
そんな花があるのなら、お前も幸せになれるかな、なんて。
一人占めして俺の恋を叶えてもらうって誘惑にもほんのすこし……ちょっぴり本気で悩んだけれど、やっぱりここは……うんと気合いをいれる。
俺の好きな人の恋を叶えてもらいたい。
だってさ、こんなにも良い奴なんだから。俺は誰よりも彼に幸せになってもらいたい。
そんな気持ちで手当たり次第に探したけれど、花は全然見つからない。
噂は本当らしく、どこかの部活の先輩は叶ったらしいなんて話だけは伝わっている。だけど目撃情報は曖昧だ。
用務員のおっちゃんや長くいる先生に聞いて、どうにか時期外れの花、とだけは聞き出せた。
ふっ、男子高校生に花の開花情報なんてわかるわけがない。
変わり種の花を見つける度に図書館で借りてきた手帳サイズの花の図鑑で確認する。
ふと、見かけない花。この時期には見ない……冬のページにあったような……白い小さな花を見つける。
「あった!!」
興奮して彼を呼ぶ。
あった、あったんだよ!
諦めているのか、少し乗り気ではなさそうな彼を呼び寄せる。
「時期外れに咲くこの花、きっとこれだ!」
あぁ、良かった。
これで、彼の願いが叶う。それを思うだけで笑みが溢れた。
「はいこれ!」
花を差し出したら彼が驚いた。
いや、当然じゃん?
「え? だってお前が欲しそうだったから」
だから見つかって本当に良かったよ。
「確かに俺も好きな奴がいるからさ。一人占めしたいなって一瞬思ったけど……。でもいつも人にすべて譲ってさ、自分は最後でいいって毎回我慢しているお前が、あれだけ切なそうに欲しがったんだ。お前が何か願うのも本当に珍しいし。だから、お前の恋が実れば良いなって」
だから、はい。
彼は震える手で、花をそっと受けとった。
あぁ、良かった。
俺的には彼の恋が叶う=失恋で全然良くはないんだけど。
でも、いつも人を優先する彼の恋が叶うなら。その方が何百倍もいいや。
「願い、叶うといいな」
「……うん」
「俺お前が好きだから、幸せになってほしいし」
「……うん」
「失恋しても親友ではいさせて欲しいな!」
「……う……うん!?」
へへへ、言っちゃった。このぐらいは許して欲しい。恋人の座は貰えなくても、一生の友達の座は欲しいなって!
顔を上げた彼が、とても驚いた顔をして、それから見て分かるほどに、ぶわりと首から耳まで真っ赤に染め上げた。
なんだなんだ可愛いの氾濫か!? と思っていると、いきなりぽろぽろ泣きながら、恋が叶ったよとすがり付いてきた。
えっ効果絶大過ぎでは!? って思ったけれど、えっと、えっと、それって、ええ!? もしかして、俺??
3年に1度、恋が叶う花が咲く。
一度に二人の恋を叶えるなんて、本当に効果は絶大だ。
俺は泣いてる彼をぎゅむりと抱き締めると、探して良かったー! なんて思ってしまった。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
可愛い物語ですね!
心がほんわかしました(*˘︶˘*).。.:*♡
ありがとうございました。
ゆきなお様
ありがとうございます!
企画が始まると、がたっと参加してしまうのですが、とても素敵な企画のおかげで可愛いお話ができました!
お読みくださり、ありがとうございます!